富士通・戸田建など開発、埋設管を効率的に検出するAIの仕組み
富士通と戸田建設、きんそく(京都市南区、奥野勝司社長)は、地中埋設管の破損事故を未然に防ぐための埋設探査において、人工知能(AI)モデルを用いて埋設管を効率的に検出する埋設探査システムの試験運用を行い有効性を確認した。今後は10月の運用開始を目指し、同システムの精度向上を図る。
断面図に現れる地中レーダーの波形を富士通のAIで解析し、金属・非金属の判別や、管内の水の有無の判定を行う。平面だけでなく深度方向も含めて埋設管の位置を推定できる。
埋設管位置の推定に対する信頼度を存在確率0―100%の範囲で利用者に示し、2次元(2D)・3次元(3D)モデルによる出力も可能。図面作成に係る工数を省力化し、関係者に素早く情報共有できる。
専門技術者の目視判定と比較して、同程度の精度での検出が可能。実験フィールドで検証した結果、再現率は80%以上となり、局所的に専門技術者の解析結果を上回ることを確認した。
波形画像の解析に係る所要時間は専門技術者による目視判定に比べて75%以上削減でき、また埋設管の存在確率や深度によるフィルタリング表示など、解析業務の効率化に役立つ。
日本建設業連合会(日建連)などの調査によると、建設現場では工事前における埋設管位置の確認不足や図面・台帳の施工記録の不整合などにより、年間150件近くの埋設管損傷事故が発生している。
損傷事故を未然に防ぐために地中レーダー探査装置を用いるが、数多くの波形画像データを基に専門技術者が目視で判定するため、解析業務の負荷低減や技術者不足の解消に加え、客観性の担保と信頼性向上などが課題となっている。
日刊工業新聞2022年5月24日