西武建設を買収したミライトHD、これからのグループ戦略
「西武建設(東京都豊島区)は、僕らの弱いところを丸ごと持っている」―。3月31日付で同社を連結子会社化したミライト・ホールディングス(HD)の中山俊樹社長は、買収の背景をこう語る。
西武HDは1月、西武鉄道の100%子会社である西武建設の株式95%をミライトHDに譲渡する契約を結んでいた。ミライトHDによる買収額はアドバイザリー費用などを含めて約620億円。西武HDはコロナ禍で鉄道やホテルの事業が苦戦する中、財務体質を強化する狙いだ。
一方、ミライトHDは収益源多様化を目指す。主力の通信建設事業は「長期的に、急落はしないが低減傾向だろう」(中山社長)。少子化で通信需要の頭打ちが懸念される上、技術革新に伴って通信基地局をはじめとする設備が汎用化・小型化していく見通しであることなどが理由だ。
そこで土木やエネルギーといった“街づくり”関連案件を増やしたくとも、知見や人材が十分でなかった。街づくりには提案力も求められるが、中山社長によると「企画や設計の力が弱かった」。西武建設の買収で一連の弱点を補えるという。
多角化への執念は、グループ再編にも表れる。7月に中核事業会社のミライト(東京都江東区)およびミライト・テクノロジーズ(大阪市西区)を吸収合併した3社統合会社「ミライト・ワン」を設立。また、同社の傘下にシステム構築(SI)事業の新会社「ミライト・ワン・システムズ」を置く計画だ。既存のSI関連の部署や事業会社を集約して技術者の育成や採用に拍車をかけ、「大規模案件(の受注)を狙っていく」(同)。
ただ、グループ再編やM&A(合併・買収)では、従業員に大なり小なり葛藤が生じる。中山社長は、この点を認めた上で「設備産業とは違い、我々は現場の技術者以外に金を稼げる人はいない」と語る。新しい知見や技能を積極的に学ぶ風土の形成を加速できるかが、収益源多様化の成否をも左右する。