ニュースイッチ

高度専門医療の動物救急センターを開設する東京農工大の「初」

東京農工大学は2022年秋をめどに、工学部の小金井キャンパス(東京都小金井市)に動物の高度専門医療の救急センターを開設する。施設内に獣医工、農工融合の産学連携スペースを置き、診療活動を生かした検査法や人工知能(AI)による診断補助などの技術開発を、一部は企業入居による産学共同研究で取り組む。動物病院は農学部の府中キャンパス(同府中市)の施設と二つになる。

東京農工大の新「小金井動物救急医療センター」は総合診療科と、がん治療などで重要な放射線治療科を開設する。約40人の獣医師・スタッフが関わる。農学部付属施設として既存の動物医療センターとともにイヌ、ネコ、家畜などの地域のかかりつけ病院(一次診療機関)から紹介を受け、高度な動物医療を行う二次診療機関だ。

1大学で二つを置くのは動物病院を持つ大学計17校で初めて。新センターでは土日祝日や夜間、救急の診療も手がける。

小金井の既存施設を改修、3階建ての3階は動物診療や農学×工学をベースとした産学連携スペースだ。研究テーマは動物血液中の腫瘍細胞をとらえる検査機器、腫瘍の光線力学的治療法、X線コンピューター断層撮影装置(CT)による仮想現実(VR)画像を使った獣医外科学教育ツールなど。小金井の他の産学連携施設との相乗効果も期待できる。

日刊工業新聞2022年4月14日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
医療には住宅街などの民間病院と、高度医療の大学の病院があり、民間では手に余る事例が大学にくるというのは、動物も人間と同じ仕組みだ。動物の夜間・救急診療は民間病院で一部、手がけられいるものの、大学では初めてだという。また1大学で二つの動物病院を持つことも、国公立11校、私立6校の中で他にないという。都市部で多くの家庭がイヌやネコを家族として大切にしていることを考えると、大学の高度施設はずいぶんと限られているのだなと感じる。それだけに東京農工大の他とは違う強さがクローズアップされそうだ。

編集部のおすすめ