「お祈りメール」を他社への推薦に繋げる24歳起業家
ABABA(大阪府吹田市、久保駿貴社長)は、企業が学生に直接求人できる、就活支援サービスを新卒の学生向けに提供する。企業が最終面接で採用を見送った学生を、他社に推薦するのが特徴で、学生は就活を初めからやり直す必要が無くなる。同サービスには現在、学生が約2000人(2022年卒)、企業が約300社登録している。同社を立ち上げた、久保駿貴社長(24)に創業の背景や事業への思いを聞いた。(小野 太雅)
―創業の経緯を教えてください。
「好きだった企業に不採用となり、一転してその企業のことが大嫌いになってしまった友人の姿を見た。いっときは、連絡もつかなくなり、友人はまるで鬱(うつ)のような状態だった。友人のために何かできることは無いかと考えた結果、思いついたのが、お祈りメールを他社への推薦に変え、学生の就活を支援する仕組みだ。それを、サービスとして展開するためABABAを起業した」
―サービスの仕組みは。
「まず、当社と提携する企業が、最終面接で採用を見送った学生に、サービスへの登録を促す。学生は自身のプロフィルや最終面接まで進んだ企業などの情報を、企業は学生が最終面接まで残った理由など人事担当者からの評価を、当社のプラットフォーム(基盤)上に登録する。当社と提携する企業は、基盤上の情報をいつでも閲覧できるので、他社から推薦された、学生に直接採用活動を展開できる。当社は、推薦された学生を採用した企業から成果報酬をいただく」
―サービスのメリットは。
「推薦された学生は就活を最初からやり直す必要がなくなり、企業は他社のお墨付きがある、学生に効率良く採用活動ができるようになる。学生を他社に推薦する企業は採用試験後も、学生の就活を応援していることから、『学生に寄り添う企業』として、企業ブランディングの向上が図れる」
―起業へのハードルは感じましたか。
「起業は今回で3度目。スピード感をもって事業を展開できているので、これまでの経験がいかせていると思う。起業は、身近な人の困りごとを解決するための方法を模索した結果、たどり着いた一手段だ。同世代の起業家も、そういった人が多い気がする。自分たちの世代は、小・中学校の頃から地球温暖化などについて話すことが多く、社会課題が身近な存在として育ってきた。社会課題を解決しようすることも、身近なことと捉えている人が多い世代なのかもしれない」
―3度の起業で学んだことは。
「お金や人脈なしで起業したので、いろんな人に助けてもらうため、とにかく『応援したいと思われる』ような人になることを意識した。営業でも、当社の事業に共感してもらうことを意識している。また、スタートアップの経営者や、これから起業しようと考えている人が参加するビジネスプランコンテストなどの大会に積極的に出場し、会社のPRの機会として活用した。起業は、まず行動することが大切だと思う」
―今後の取り組みの方針は。
「2月に、ベンチャーキャピタル(VC)などから6000万円を調達した。調達資金は、当社の人員の増強や宣伝広告費などに充て、23年卒の学生の登録者数を1万人、企業の登録は12月末までに1000社を目指す。VCから資金を調達したので、当然、イグジットである上場も視野に入れている」