焼肉レストランで活躍するロボット、運営会社トップが導入に踏み切った決め手
上場(うわば)食肉(佐賀県唐津市、世戸耕平社長)は、食肉の卸・小売り事業者。唐津市と福岡市では、直営の「焼肉レストラン上場亭」を計3店舗運営している。2021年10月、上場亭枝去木(えざるぎ)店(唐津市)に配膳ロボット2台を導入し、外食産業が抱える課題解決に取り組んだ。世戸社長は「導入の目的は、ずばり人手不足の解消」と強調する。(九州中央・勝谷聡)
焼肉レストラン上場亭の枝去木店は県道沿いにある店舗。広い駐車場があり、小売店も併設する。平日ランチタイムには男女問わずビジネスパーソンやプロドライバーらが訪れ、週末や夜間にはファミリー層の来店が集中する。
ホール担当者は社員、パート、アルバイトを合わせて計6人。客が集中すると手が回らないほどの忙しさになる。そこで新たな助っ人として、配膳ロボット2台を導入した。繁忙期には、ホールスタッフとロボットが協働して配膳や下げ膳を行う。
導入した配膳ロボットは、日本システムプロジェクト(JSP、東京都新宿区)の「PEANUT」。マッピングやセンサー機能を使って店舗内の状況などを判断し、客の個室の前まで移動する。3段の棚に載せて料理や飲み物を運ぶ。
音声での案内機能や、バースデーソングを歌う音楽サービス機能も持つ。「お客さまは最初は驚かれたが、子どもたちは進んでお膳を受け取るなど喜んでいただいている」(同店ホールスタッフ)。
タッチパネル操作で配膳先を指定でき、ロボットを介して配膳や下げ膳ができる。新型コロナウイルス感染症のリスクが続く中で、客とスタッフの直接の接触回数が低減できて、相互の安心につながっている。
世戸社長は約5年前からロボット導入を検討してきた。21年夏に業界向け展示会でようやく実物を見ることができ、導入に踏み切った。決め手は佐賀市に販売代理店があることだ。
焼肉店など外食業界では、慢性的に人手不足が続いている。客が集中する曜日や時間帯があり、こうした繁忙期に必要な人員の確保が課題となっている。「お客さまに対しては、どのタイミングでの来店でも、同じクオリティーで対応したい」と世戸社長は強調する。
配膳ロボットは一度に3人分のお膳を運ぶことができる。その分、ホールスタッフの作業量が減り、代わりにバックヤードや他のサービスの提供に手を割ける。
世戸社長は「肌感覚で約2倍の効率アップが図れた。人件費関連のメリットを含めて目に見える効果があった。スタッフの心の余裕は、お客さまの笑顔につながる」と指摘する。
サービスの質を維持し、さらに高めるには今後もデジタル化は必要と世戸社長は考える。「(デジタルで不足を)補うだけでなく、チャレンジすることで可能性が広がる」と展望する。