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SBIホールディングスが描く新生銀行子会社化のシナジー戦略

拡大路線を歩み続けているSBIホールディングス(HD)が、「第4のメガバンク」構想にまた一歩近づいた。2021年9月、新生銀行に対する株式公開買い付け(TOB)を突如表明し、12月に連結子会社化した。今後はグループ一体でシナジー(相乗効果)を追求し、それにより「TOBの大義である新生銀による約3500億円の公的資金返済の道筋がついていくだろう」とSBIHDの北尾吉孝社長は見通す。

新生銀の前身である日本長期信用銀行が1998年に経営破綻して20年余り。その間トップ交代を繰り返してきたが、「終始一貫した思想哲学がなく(公的資金が返済できなかったのも)やむを得なかった」と北尾氏は見る。「改善の余地は相当あり、それによって利益の向上は見込めるだろう」と、収益力と企業価値向上に向けて改革を実行する段階に移った。

まずは経営陣を刷新し、川島克哉SBIHD前副社長が社長に、五味広文元金融庁長官が会長に就任。2月28日のSBIHDの決算説明会では、北尾氏が新生銀の社名変更を検討していることを明らかにした。「名は体を表す」と述べ、意識改革の上で社名変更の必要性を強調した。

具体的な事業としては、顧客中心主義の徹底に向けてSBI証券と新生銀が金融商品仲介業での全面的な提携に向けて準備を開始。クレジットカード積み立てサービスなどでも連携していく。

証券業や暗号資産を展開するSBIHDは19年に福島銀行、20年にきらやか銀行、仙台銀行を傘下に置くじもとHD、21年には筑波銀行への出資を表明するなど、銀行業の拡大に力を入れている。ここに、カードローンをはじめとする消費者金融関連事業やストラクチャードファイナンス(仕組み金融)事業に強みを持つ新生銀グループが加わった。

これからもまだ拡大路線を取っていくと見られるが、狙い通りのグループシナジーを発揮できるかが今後は問われていく。

日刊工業新聞2022年3月10日

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