「車載電池」安定供給へ、パナソニックのAIの生かし方
パナソニックエナジー(大阪府守口市、只信一生社長)は、車載電池の正極材に使うニッケル含有率を現状の90%から、2030年をめどに50%に減らす。絶対量の低減にもつなげる。ITを使った材料設計手法「マテリアルインフォマティクス」などを活用して、材料配合を効率的に探索する。ニッケルなどの希少金属(レアメタル)は採掘地が偏在し、国際情勢で価格変動を受けやすい。使用量を低減できれば、電気自動車(EV)普及で需要が高まる電池の安定供給につながる。(日下宗大)
パナソニックエナジーの車載電池の正極材はニッケル、アルミニウム、コバルトが主な成分。その内、ニッケルの含有率は90%を占める。これを30年までに段階的に50%程度まで引き下げる。
同社はすでにコバルトを使わない「コバルトフリー」の電池を数年内に投入する方針を示していた。さらに含有率の高いニッケルについても使用量の削減に踏み込む。渡辺庄一郎副社長(最高技術責任者〈CTO〉)は「将来的にコバルトフリーの次は、ニッケルレスだという認識だ」と話す。
ニッケルレスに向けてカギとなるのがマテリアルインフォマティクスだ。開発の知見をデータベース化し、人工知能(AI)で材料設計をシミュレーションする。新型電池の候補材料は「かなり絞り込んで抽出できる」(渡辺副社長)という。10―20年前と比べ現在は、実験や量産性の判断に至る時間を大幅に短縮できた。
足元ではロシアのウクライナ侵攻などで国際情勢が不安定な中、資源価格が高騰している。ロシアが世界供給の約1割を握るニッケルも高値圏で乱高下する。渡辺副社長は「資源の問題がかなり注目されてきた」と述べる。
ニッケルの使用率削減について渡辺副社長は「難しいハードルだ」と認めるが、「コバルトフリーも実現できた。次(ニッケルレス)も、しっかりやっていく」と決意を覗かせる。