三菱自動車が電動化戦略で問われる独自技術の磨き上げ
三菱自動車は国内外で電動化戦略を加速する。タイで2024年以降に販売する乗用車をすべて主力のプラグインハイブリッド車(PHV)などの電動車にする。日本では今春に軽電気自動車(EV)、欧州では23年に電動車の投入を検討する。連合を組む日産自動車や仏ルノーなどとの協業で新型車を効率的に投入しながら、独自技術も磨くことが重要になりそうだ。(西沢亮)
「24年以降に販売する乗用車はすべてxEV(電動車)にしていく」。三菱自の小糸栄偉知タイ法人社長は18日に現地で記者会見し、乗用車の新型車をPHV、EV、ハイブリッド車(HV)のいずれかの電動車に切り替える方針を示した。
タイで販売する電動車は現在、スポーツ多目的車(SUV)「アウトランダー」のPHVモデルのみ。東南アジアでは23年度以降に地域戦略多目的車(MPV)「エクスパンダー」でPHV技術を応用した独自のHVの投入を予定するが、小型車「ミラージュ」の電動化など品ぞろえの拡充が課題になる。
一方、タイの販売台数の約6割を占める商用車系では、ピックアップトラック「トライトン」とその派生車のSUV「パジェロスポーツ」はディーゼル車の販売を続ける。
中国では合弁相手の広州汽車集団と共同開発したEV「エアトレック」を23日に発売。日本では日産と共同開発している軽EVを22年度初めに投入する。車台(プラットフォーム)などの基幹部品だけでなく生産拠点も共通化してコスト競争力を高める。
欧州では23年にルノーとの共同開発で小型SUV「ASX(日本名はRVR)」の新型車を含む2車種を投入する。ルノーの工場での生産や連合の共通車台「CMF―B」の採用など基幹部品の共用を決定。駆動装置(パワートレーン)はPHVやHVを含め「真剣に検討している」(加藤隆雄三菱自社長)段階としている。
中期では30年までに日産が開発を主導するEV専用車台「CMF―EV」を採用した新型車の投入を予定。三菱自の長岡宏副社長は30年以降に東南アジア市場を見据えて「独自のEVをやっていく可能性もある」との考えを示す。
脱炭素に向けEVの普及が見込まれる中、電動車を効率的に開発して投入し、地域ごとに異なるニーズや課題に応えることが重要になる。三菱自にとっては主力の東南アジア市場で顧客の要望にきめ細かく対応するためにも、欧米や中国市場を主力とする日産やルノーに頼るだけでなく、独自の技術を磨くことも求められている。