「財務基盤の強化は急務」な九州電力が掲げた目標
九州電力は2030年を見据えたグループ経営ビジョン実現に向け、中間目標として26年3月期の財務目標を掲げた。その一つが自己資本比率20%程度への引き上げだ。池辺和弘社長は「競争環境が激化する中、安定的なグループ経営のために財務基盤の強化は急務」として改善を図る。
21年3月期末の同比率は12・7%(ハイブリッド社債の資本性認定分を加えると14・7%)。大手電力10社の同期末の比較(有価証券報告書ベース)では10番目、10社平均22・5%と差が開く。
自己資本比率が直近で約20%だったのは、12年3月期末の19・7%となる。11年3月期まで25%以上あったが東日本大震災を経て低下し、15年3月期に9・0%まで下げた。
15年以降、収支改善に伴い底打ちしたが、ここ5年は12―13%台で推移する。要因を同社は「原子力の再稼働遅延・停滞の影響、競争進展による販売電力量の低迷」(コーポレート戦略部門)とする。約20%が実現すれば、震災前の水準が見えてくる。
達成手段は“稼ぐ力”を高めることだ。26年3月期は自己資本当期利益率(ROE)を8%程度と想定する(21年3月期は5・09%)。フリーキャッシュフローを約700億円創出し、有利子負債の抑制により自己資本比率を改善する。
26年3月期には連結経常利益1250億円以上との目標もある。うち750億円が国内電気事業で、電化推進や九州内外の顧客獲得で収益を拡大する。同じく500億円は成長事業による利益とし、国内外の再生可能エネルギー開発、海外発電事業への参画などで稼ぐ。
他方で利益確保には経費低減も不可欠。足元の懸念材料は玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の特定重大事故等対処施設だ。3、4号の設置期限がそれぞれ8、9月に迫るが、相次ぐ火災などで工事は中断中。間に合わなければ一時的だが収支を圧迫する。安全性を確保した上で、早期の工事再開に道筋をつけることが必要となる。