【2016を読む】新・定番商品へ。アウトバウンドで稼ぐ
コンドームは中国に、みそかつは台湾に
**絹のコスメ、仏で通販開始
化粧品メーカーのアーダン(鹿児島県奄美市)は、フランスのテレビ放送による通信販売を16年に始める。同社にとって、海外展開に弾みをつける取り組みとなりそうだ。
アーダンは95年の設立以来、天然素材を用いて界面活性剤を使わない高純度化粧品にこだわり続けた。特徴は絹の含有量が85%と高いこと。対面販売や通信販売でリピーターを増やしてきた。
海外進出で着目したのが絹織物の街として知られるフランス・リヨン。12年に中小企業基盤整備機構による「F/S支援事業(現在の海外ビジネス戦略推進支援事業)」の採択を受け、フランスでの市場調査などを開始した。13年には現地法人「アーダンフランス」を設立。パリで開かれる化粧品の展示会に13年から3年連続で参加した。
リヨンでは外務省主催の領事祭の日本ブースに出展した。15年夏にはフランスの民間テレビ局『テー・エフ・アン(TF1)』の通信販売部門と契約。昨年秋からTF1のカタログ通販を始めた。TF1の現地店舗でも販売している。
そして16年1月、いよいよ通販番組の放送が始まる。将来は、EU圏や北米で市場拡大を目指している。西社長は「美容関連なのでフランスからの発信力が強い。
絹の化粧品は海外にはほとんどなく、関心が高い」と進出の動機を説明。「海外の愛用者の評判も上々」(西社長)で「15年はアラブ首長国連邦のドバイにあるテレビ局とも同様の契約を結んだ」(同)。16年は中東約18カ国でケーブル放送による通販を行う予定だ。
海外ではフランスを始め4カ国で販売を行っており、さらに北米、台湾など7カ国で販売に向けた準備を進める。売り上げは国内外合計で15年6月期が5億円。このうち「海外市場は17年までに1億円を目指す」(同)と意気込む。
売り上げの9割を海外市場で稼ぐ、国内メーカーの商品がある。ぺんてる(東京都中央区、和田優社長、03・3667・3333)の水性ボールペン「エナージェル」シリーズは、アジア、欧州、アフリカ、中南米と販売先は全世界にわたる。中でも北米は5割以上を占めるドル箱市場だ。
横書きが主流の海外において、書き味がよく、手も紙も汚さない機能性の高さがユーザーの心をつかんでいる。色の濃い染料インキを採用。紙と先端のボールの摩擦を特殊な添加剤で極力減らし、なめらかな書き味を実現。インクの粘度を下げ、速乾性を高めた。
同社は1953年に製品の輸出を開始。65年に米国法人を立ち上げて以来、海外に視野を向け続けている。同シリーズも、現地のニーズを徹底して吸い上げ、日本で製品を開発。心臓部である中芯は全量日本で作る。「品質の良さも選ばれる理由の一つだ」(前澤士郎取締役)。
01年の発売以来、5億本を売り上げた同シリーズ。海外市場の多様化するニーズを受けて、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けの「Kawaii」シリーズや、顔料インキ採用で色あせにくい「パーマネント」など新製品もそろえた。前澤取締役は「これからもニーズをとことん反映して、パワーブランドに育てていく」としている。
オカモトは来春の稼働を目標に、中国東莞市でコンドーム工場を約10億円かけて建設している。医療器具の一種であるため、各国とも当局により仕様が決まっている。以前から中国向けには、海外工場で中国仕様の製品を作り、輸出していた。より素早く安定的に製品を供給するため、工場建設を決めた。同国での工場建設は初という。
中国では欧米勢や現地企業などコンドームメーカーがしのぎを削るが、日本製は信頼の高さから人気という。中国の富裕層を中心としたインバウンド需要でも「国内需要が年数%ずつ縮小する今も、売り上げベースで15年は前年に比べ3割日本での販売が増えた」(岡本良幸社長)。現地工場では日本人従業員を1人常駐させ、生産管理と品質管理を担わせる。開発は日本で展開し、現地に落とし込む模様だ。
中小企業も産業用機器分野で、海外市場に狙いを定めた専用商品を投入している。コガネイ(東京都小金井市)が15年7月末に発売した5ポート電磁弁「iB―ZERO」は、同社初の海外向け製品。開発段階から中国市場向けに取り組んだ。
本体内部の摺動(しゅうどう)部を含めて本体全体を樹脂一体成形した電磁弁で、開発には約4年を費やした。発売以来、順調に販売数を伸ばし、「初年度目標の6万個は達成できる」(営業推進部の藤田圭輔グループリーダー)と自信をみせる。
中国市場は日本を除く同社の地域別売上高でトップ。同市場の攻略が重要になる。価格競争力をつけるため、独自の樹脂成形法を開発。電磁弁を連結する際に必要なマニホールドを本体と一体化したシンプルな構造にすることで、価格を金属製の同社従来製品比で20―30%抑えることに成功した。
またバルブや配管口継ぎ手などの型式を絞り込むことで在庫管理を簡易化。注文に迅速に対応できる製品設計にした。藤田リーダーは10年から中国に赴任し、15年10月に帰国したばかり。同氏は「中国では当日に納品を依頼される場合がある。即納ニーズに対応できるように工夫した」と話す。
次のページは名古屋めしがアジアでうける
化粧品メーカーのアーダン(鹿児島県奄美市)は、フランスのテレビ放送による通信販売を16年に始める。同社にとって、海外展開に弾みをつける取り組みとなりそうだ。
アーダンは95年の設立以来、天然素材を用いて界面活性剤を使わない高純度化粧品にこだわり続けた。特徴は絹の含有量が85%と高いこと。対面販売や通信販売でリピーターを増やしてきた。
海外進出で着目したのが絹織物の街として知られるフランス・リヨン。12年に中小企業基盤整備機構による「F/S支援事業(現在の海外ビジネス戦略推進支援事業)」の採択を受け、フランスでの市場調査などを開始した。13年には現地法人「アーダンフランス」を設立。パリで開かれる化粧品の展示会に13年から3年連続で参加した。
リヨンでは外務省主催の領事祭の日本ブースに出展した。15年夏にはフランスの民間テレビ局『テー・エフ・アン(TF1)』の通信販売部門と契約。昨年秋からTF1のカタログ通販を始めた。TF1の現地店舗でも販売している。
そして16年1月、いよいよ通販番組の放送が始まる。将来は、EU圏や北米で市場拡大を目指している。西社長は「美容関連なのでフランスからの発信力が強い。
絹の化粧品は海外にはほとんどなく、関心が高い」と進出の動機を説明。「海外の愛用者の評判も上々」(西社長)で「15年はアラブ首長国連邦のドバイにあるテレビ局とも同様の契約を結んだ」(同)。16年は中東約18カ国でケーブル放送による通販を行う予定だ。
海外ではフランスを始め4カ国で販売を行っており、さらに北米、台湾など7カ国で販売に向けた準備を進める。売り上げは国内外合計で15年6月期が5億円。このうち「海外市場は17年までに1億円を目指す」(同)と意気込む。
おなじみの商品は売り上げの9割が海外
売り上げの9割を海外市場で稼ぐ、国内メーカーの商品がある。ぺんてる(東京都中央区、和田優社長、03・3667・3333)の水性ボールペン「エナージェル」シリーズは、アジア、欧州、アフリカ、中南米と販売先は全世界にわたる。中でも北米は5割以上を占めるドル箱市場だ。
横書きが主流の海外において、書き味がよく、手も紙も汚さない機能性の高さがユーザーの心をつかんでいる。色の濃い染料インキを採用。紙と先端のボールの摩擦を特殊な添加剤で極力減らし、なめらかな書き味を実現。インクの粘度を下げ、速乾性を高めた。
同社は1953年に製品の輸出を開始。65年に米国法人を立ち上げて以来、海外に視野を向け続けている。同シリーズも、現地のニーズを徹底して吸い上げ、日本で製品を開発。心臓部である中芯は全量日本で作る。「品質の良さも選ばれる理由の一つだ」(前澤士郎取締役)。
01年の発売以来、5億本を売り上げた同シリーズ。海外市場の多様化するニーズを受けて、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けの「Kawaii」シリーズや、顔料インキ採用で色あせにくい「パーマネント」など新製品もそろえた。前澤取締役は「これからもニーズをとことん反映して、パワーブランドに育てていく」としている。
コンドームから電磁弁まで
オカモトは来春の稼働を目標に、中国東莞市でコンドーム工場を約10億円かけて建設している。医療器具の一種であるため、各国とも当局により仕様が決まっている。以前から中国向けには、海外工場で中国仕様の製品を作り、輸出していた。より素早く安定的に製品を供給するため、工場建設を決めた。同国での工場建設は初という。
中国では欧米勢や現地企業などコンドームメーカーがしのぎを削るが、日本製は信頼の高さから人気という。中国の富裕層を中心としたインバウンド需要でも「国内需要が年数%ずつ縮小する今も、売り上げベースで15年は前年に比べ3割日本での販売が増えた」(岡本良幸社長)。現地工場では日本人従業員を1人常駐させ、生産管理と品質管理を担わせる。開発は日本で展開し、現地に落とし込む模様だ。
中小企業も産業用機器分野で、海外市場に狙いを定めた専用商品を投入している。コガネイ(東京都小金井市)が15年7月末に発売した5ポート電磁弁「iB―ZERO」は、同社初の海外向け製品。開発段階から中国市場向けに取り組んだ。
本体内部の摺動(しゅうどう)部を含めて本体全体を樹脂一体成形した電磁弁で、開発には約4年を費やした。発売以来、順調に販売数を伸ばし、「初年度目標の6万個は達成できる」(営業推進部の藤田圭輔グループリーダー)と自信をみせる。
中国市場は日本を除く同社の地域別売上高でトップ。同市場の攻略が重要になる。価格競争力をつけるため、独自の樹脂成形法を開発。電磁弁を連結する際に必要なマニホールドを本体と一体化したシンプルな構造にすることで、価格を金属製の同社従来製品比で20―30%抑えることに成功した。
またバルブや配管口継ぎ手などの型式を絞り込むことで在庫管理を簡易化。注文に迅速に対応できる製品設計にした。藤田リーダーは10年から中国に赴任し、15年10月に帰国したばかり。同氏は「中国では当日に納品を依頼される場合がある。即納ニーズに対応できるように工夫した」と話す。
次のページは名古屋めしがアジアでうける
日刊工業新聞2016年1月1日地域経済面