人流増でコロナ第7波到来か、感染症学の専門家の見方
新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大する中でウイルスは変異をくり返し、収束が見えない状況になっている。日本ではマスクの習慣やワクチン接種で他国よりも感染拡大が抑えられているが、まだ感染者は増え続けている。感染症学が専門の日本医科大学の北村義浩特任教授に、今後の感染症の動向予想などを聞いた。
―第6波での1日の感染者はこれまでよりも多いです。
「現状を見ると首都圏での感染者は減少傾向にあり、第6波の終盤には感染者数が一番多かった時の10分の1程度まで減少するだろう。ただ地方での感染者の減少が見られず、沖縄県では横ばいが続き北陸地方では増加傾向にある。これは首都圏の人たちが地方に移動することで感染が広がったとみている」
「一方で新たな変異株のステルスオミクロン株の拡大が懸念されているが、首都圏で広がったという報告はない。人口が多い首都圏で感染が広がらない限り、日本中に拡大することはないと考える」
―3回目のワクチン接種が始まりました。
「新型コロナワクチンは1回接種すれば半永久的に効果があるのではなく、時間とともに効果が減少する。そのため定期的にワクチンを接種する必要がある。多くの人が3回目のワクチンを接種することで感染者だけでなく重傷患者も減り、感染拡大が落ち着くと予想される」
「前回接種した種類と異なるワクチンを打つ『交互接種』も見られる。ファイザーとモデルナで交互接種をしても副反応の違いが見られるが抗体の効果は変わらず、目くじらを立てるほどではないと考えている」
―第7波は来ると思いますか。
「3―4月は新年度への切り替え時期で人の流れが多くなり、第6波が落ち着くタイミングで第7波が来ると予想する。時期的に花見客や卒業旅行をする人が増え、首都圏の人たちが地方に出向く機会も多くなり感染が拡大すると見られる。そうならないためにも、ワクチンを接種することが必要だろう」
【略歴】きたむら・よしひろ 89年東大院修了。90年国立予防衛生研究所(現感染症研)厚生労働技官。00年東大助教授。06年中国科学院微生物研究所。11年国際医療福祉大教授。20年現職。石川県出身、61歳。医学博士。
【記者の目/臨床・承認 見直し必要】 新型コロナが発生して約2年が経過する。日本ではマスク着用が定着し、定期的にワクチンが接種できる環境が整った。だがワクチンや治療薬の開発に出遅れ、自国だけで感染症を防衛できない。政府は次の感染症に備えたワクチン開発拠点を形成する。開発したらすぐに接種できるよう緊急時での臨床試験や承認の仕組みの見直しが必要だろう。(飯田真美子)