サントリーHDが酒類市場の劇的な変化の中、事業を再編した理由
サントリーホールディングス(HD)はコロナ禍で酒類市場が劇的に変化する中、酒類事業を再編する。7月1日付で国内の酒類会社5社を統合し、新会社「サントリー」を設立。生産から営業まで一元的な経営体制にすることで意思決定を速め、機能性商品やノンアルコールなどカテゴリーをまたいだ商品開発やマーケティングを展開する。
統合するのはサントリーBWS、サントリービール、サントリースピリッツ、サントリーワインインターナショナル、サントリー酒類の5社。サントリースピリッツが4社を合併した上で社名をサントリーに変更する。新会社はビール、スピリッツ、ワインの3事業と営業の4カンパニー体制となる。新会社の売上高は約6500億円、サントリーHD全体の売上高のうち3割を占める。
サントリーHDは2017年に国内の酒類事業の戦略立案を担当する中間持ち株会社のサントリーBWSを設立。その傘下にビールやワインなどの酒類事業会社を置いていた。鳥井信宏副社長は「中間持ち株会社だと全体の立案遂行が難しく、本当の意味の製造から販売までの一貫体制が取りづらかった」とした上で、「皆が同じことを感じ侃々諤々(かんかんがくがく)の議論の末、新しいサントリーを立ち上げることになった」と述べた。
酒類市場は新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店での酒類提供が制限され、業務用の販売が大きく落ち込み、家庭用のシェアが拡大。ビール離れもさらに加速している。一方で、健康志向の高まりで機能性商品やノンアルコール飲料のシェアが伸びている。
林正人サントリーBWS取締役常務執行役員は「カテゴリーの壁を取り払い、市場のニーズを酒類全体で捉え、思い切った投資判断をしていきたい」と話す。これまで固定化していた人材の交流を活発化し、カテゴリーをまたいだプロジェクトチームを立ち上げ、酒類全体を俯瞰(ふかん)した総合的なマーケティングを加速する。