米国で人気「ハードセルツァー」はビール離れの若者を取り込めるか
ビール大手各社が米国で人気のそのまま飲めるアルコール飲料(RTD)「ハードセルツァー」を強化している。ハードセルツァーはサトウキビ由来のアルコールをベースとした炭酸水。果実などのフレーバーや低アルコール、低糖、低カロリーが特徴で、健康志向を背景に市場が拡大している。若年層を中心にビール離れが進む中、各社、新商品を投入し、この層の取り込みを図る。
サントリーは米国市場でテキーラブランド「Sauza」から「Sauza Agave Cocktails」を3月中旬に発売する。サントリーによるとグローバルのRTD市場は、2020年に313億ドルと15年比で約2倍に拡大。年成長率は15―17年で平均4%の成長だったが、17―20年は平均21%と急拡大している。同社は21年に1200億円の販売金額を30年に3000億円に引き上げることを目指す。
キリンビールは日本市場向けにウォッカ「スミノフ」から「スミノフ セルツァー」を22日に発売し、ハードセルツァー市場に参入する。フレーバーはオレンジ&グレープフルーツ、ホワイトピーチの2種類で、すっきりした味わいが特徴だ。同社によると、日本のハードセルツァー市場は22年に175億円に拡大する見込みで、22―27年に年平均21%増で成長するとみている。
ハードセルツァーはRTDの一種だが、現在の日本のRTD市場の主流はチューハイだ。チューハイはウォッカや焼酎など蒸留酒にソフトドリンクを加え、炭酸で割ったアルコール飲料。健康志向の高まりで機能性商品も増えているが、高アルコールのストロング系商品も多く、あくまで購入者の中心は中高年層だ。
こうした中、若年層取り込みのカギとしてハードセルツァーに注力するが、サッポロビールが先行して21年8月に発売した「WATER SOUR」は終売となった。同社は日本でも若年層を中心に甘くない低アルコール飲料の需要が高まっているとみて、同商品を発売。だが、もくろみ通りにはならず、「スタートは好調だったが、リピートを獲得できなかった」(広報部)と分析している。
若年層と酒類市場の距離が開く中、各社、ハードセルツァーを一つの突破口にしたい考えだ。だが現状、市場に根付いていると言えるのはあくまで米国の話で、日本に根付くには、味やコンセプト、ブランドなど、まだ試行錯誤が続きそうだ。