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ファシリテーターが選ぶ「2015年この3本」#16 “鉄は中国なり”

 素材業界の2015年を振り返ると、「中国の変調」が思い当たる。中国政府が「高成長」から「中成長」にシフトする中で、鉄鋼製品を中心に需要を上回る供給過剰が深刻化。あぶれた余剰な鋼材が海外市場へと周り、世界の市況の悪化を招いた。また中国の成長を当て込んだ製鉄原料などの需要不振で、資源国経済にも大打撃となった。2016年は中国変調の余波は止むのか―。

●赤字総額1兆円!?中国の鉄鋼過剰供給は全世界に暗い影
https://newswitch.jp/p/2912

 10月に中国の習近平国家主席が英国を訪問した際に、中国が鉄鋼生産の能力削減に取り組んでいる成果をアピールした。それだけ世界的に中国が安価な鋼材を世界に輸出している現状が問題視されており、中国に改善を求める外圧は強まっている。ただ12月下旬にアジアインフラ投資銀行(AIIB)が正式に発足した。中国から鋼材の輸出ドライブが加速されることが心配される。安価な鋼材が世界市場に回り、市況を悪化させる負の循環は16年もやみそうにない。

●「百貨店と粗鋼生産」中国で明暗
https://newswitch.jp/p/2711

 2015年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれるなど、中国をはじめとする訪日外国人の旺盛な消費行動が小売り各社を潤わせた。少し強引ではあるが、「中国」で明暗が分かれた、というのを取り上げた個人的に思い入れがある記事の一つだ。 

●素材業界にイエローカード!「産業競争力強化法」相次ぎ適用
https://newswitch.jp/p/1049

 余剰能力問題は実は日本の素材産業にもあったという話。特に日本の電炉業界は、地域の建設業界と密接な関係にあって、それで生かされてきたという背景がある。地域の鉄資源のリサイクルするという重要な役割も担っているが、それが非効率な産業構造を継続させる理由にはならないだろう。実際に大阪製鉄が東京鋼鉄をTOBで子会社化する。新日鉄住金傘下の電炉メーカーを中心とした業界再編の動きは2016年により活発化しそうだ。
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
「ニュースイッチ」が始まった今年4月。時期を同じくして、記者を「卒業」し、デスク業務を任されることになりました。第一線の「声」が聞けない中で、ファシリテーターとしてコメントの書く難しさを痛感しながらも、昔の記事を読み返したり、知人に最近の状況を聞いたりしながら、自分なりの主張を盛り込んでみました。時に的外れなコメントには大目に見ていただきながら、温かいアドバイスの「声」をいただければ幸いです。2016年もよろしくお願いいたします。

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