赤字総額1兆円!?中国の鉄鋼過剰供給は全世界に暗い影

日本企業からは長期戦を覚悟する声も・・。

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**赤字総額1兆円
 一向に反転の兆しが見えない海外の鋼材市況に、相次ぐ企業業績の下方修正―。中国鉄鋼産業の過剰能力問題は依然、全世界に暗い影を落としている。中国メーカー自らも大量出血を伴い、当初は長続きしないと見られていたが、特段の改善もないまま年の瀬を迎える。この苦境はいつまで続くのか。国内の経営者からは長期戦を覚悟する声が上がる。

 「中国企業は赤字でも補助金で生かされている。(そのしわ寄せで)本来、市場から退出せずに済むはずの(他国の)企業がつぶれてしまう」。ある鉄鋼大手首脳はこう言って問題の深刻さを憂える。最も収益力があるとされる宝山鋼鉄(上海市)も7―9月期決算で赤字に転落。「中国の主要企業の赤字総額は1―9月期で1兆円近い」(日本鉄鋼連盟の柿木厚司会長)という惨状だ。にもかかわらず、中国勢による過剰生産と海外輸出は止まらない。市況低迷は全世界に波及。米国や英国、ブラジルなどで製鉄所の一部休止や高炉閉鎖、人員削減が相次ぐ。

 ここ最近、訪英した習近平国家主席を筆頭に中国要人が外交の場で、問題解決に真剣に取り組んでいることを相次ぎ表明。しかし、柿木鉄連会長は「現実的に大きな変化は見られない」と指摘する。中国の製鉄所は立地地域にとって最大の雇用の場。構造改革を目的に製鉄所をつぶせば、深刻な雇用不安になりかねない。そこから政治不安にまで発展することを政府は恐れる。

ケタ違いに時間も


 阪和興業の古川弘成社長は「統合再編が起こるなら、赤字が3年続いてからだ。正常化するまで5年から10年かかる」と予測する。しかも「中国は利益が出始めれば、誰かが投資してつくり始める。現にステンレスはまだまだつくると言っている」と言う。

 日鉄住金物産の玉川明夫副社長も「過去に日本の鉄鋼業がやってきた(合理化の)プロセスになればいいが、カットする過剰能力の数字がケタ違いで時間がかかる」と口をそろえる。

 このほど、民間で最大級を誇る唐山長城鉄鋼集団(河北省唐山市)の製鉄所が閉鎖を余儀なくされた。中国のソーシャル・メディア上の写真や動画には、市庁舎前に集まった数百人のぶぜんとした表情の製鉄所作業員らが、救済を求める様子が映し出されている。「中国に西洋手術はできない。漢方薬型の整理統合になる。我々はこれが長期化するのを前提にビジネスモデルを進めていく」(阪和の古川社長)と長期戦への覚悟を固めている。

日刊工業新聞2015年12月9日 総合1面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

世界の鉄の需要は16億トンに対し、生産能力は23億トンと、6-7億トンの余剰分がある。そのうち、中国が半分の3億トンを占めると言われる。中国政府も最近になって、減産や製鉄所の統廃合の旗を振っているが、進みは緩やかだ。需要と供給がバランスするのはまだまだ時間がかかりそうだ。

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