グローバル市場を開拓する参天製薬、社長が明かす財務課題
参天製薬は医療用眼科薬に特化した医薬品メーカーとしてグローバルな市場開拓を進めつつ、2026年3月期までの中期経営計画で谷内樹生社長は「足元の利益率と株主資本利益率(ROE、国際会計基準)向上が急務」と課題を示す。実際、19年3月期に11・1%だったROEは、20年3月期に8・0%、さらに21年3月期には3・0%と大幅に低下してしまった。
大日本住友製薬や小野薬品工業、塩野義製薬など、ROE10%以上(21年3月期)を確保する医療用医薬品メーカーが多い中、ROE改善に取り組む参天製薬は中計でROE13%以上を目標に掲げる。コアベースのROEは21年3月期も12・3%と堅調で、実現性はある。谷内社長は「基盤事業で着実に利益を生み出しつつ、次の成長に向けて新規事業を立ち上げ、早期に収益化する。国際企業としての土台強化も遂行する」ことで目標を達成する考えだ。21年3月期に計上した無形資産の減損損失がなくなったこともあるが、中計初年度の22年3月期は第2四半期(4―9月期)時点で眼科薬を中心とした基盤事業の営業利益率向上もあり、目標に向け追い風となりそうだ。
ただ、ROEの目標達成にはさらなる利益成長が欠かせない。同社では21年3月期時点で39%だった原価率を、26年3月期にかけて4ポイント程度抑制する考え。製品やラインの組み合わせと、計画後半の新工場立ち上げにより、設備投資に伴う減価償却などを吸収した上で低減できるとみている。さらに研究開発費を売上高の約10%、販売管理費をほぼ横ばいでコントロールしながら、着実に利益を確保できる体制を築いていく。また中計期間に1000億円の設備投資を計画するが、着実な投資回収が見込めるとして借り入れも活用する。
同社は眼科に特化しつつ、その中で市場を広げることで成長戦略を推し進める。中国や米国など海外市場の開拓に加え、細胞・遺伝子治療技術や自由診療市場向け製品、デジタルヘルス領域など、今後成長が見込める分野への展開を中計で打ち出した。植田晃然ゴールドマン・サックス証券アナリストは「具体的な施策と今後の成長余地の大きさが提示された」と評価。モルガン・スタンレーMUFG証券アナリストは「中国事業の再成長と日本事業における特許切れ影響の緩和が利益成長のカギ」と見る。