産総研が成功、トンボの「変態」遺伝子群を特定した意義
産業技術総合研究所生物プロセス研究部門の二橋亮主任研究員らは、トンボが幼虫から成虫に変態するために必要な遺伝子群の特定に成功した。一度に大量の遺伝子配列解析を行う「次世代シーケンサー」などを用いて解析。「さなぎ」の時期を持たないトンボでは、他の昆虫で見られるさなぎの時期の特徴を決定する遺伝子が、幼虫と成虫の特徴を作り出す遺伝子の両方を制御する機能があることが分かった。特定の昆虫に有効な農薬の開発につながると期待される。
多くの昆虫類は幼虫から成虫に移行する変態によって形態や行動が変化する。昆虫類の変態に関する仕組みは、幼虫と成虫の間のさなぎの時期を持つ昆虫を中心に研究されてきた。だが、さなぎの時期を経ないトンボの幼虫や成虫の変態に関わる具体的な遺伝子の機能は未解明だった。
研究グループはまず、トンボの遺伝子発現を網羅的に解析。その結果、幼虫の時期に発現する遺伝子と成虫の時期に発現する時に関係する計15種類の遺伝子を得た。このうち遺伝子の機能を調べたところ、重要な3種類の遺伝子を特定した。さらにそのなかの一つで他の昆虫ではさなぎの特徴を決定する遺伝子「ブロード遺伝子」が、さなぎの時期を持たないトンボの場合、幼虫の特徴を作り出す遺伝子と成虫の特徴を作り出す遺伝子の両方を制御していることを見いだした。
東京大学と東京農業大学との研究。
日刊工業新聞2022年2月22日