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AGCが業績目標を大幅に上方修正、けん引する事業の中身

AGCが業績目標を大幅に上方修正、けん引する事業の中身

平井社長

AGCは、中期経営計画の最終年度である2023年12月期の目標を大幅に上方修正した。塩化ビニル樹脂やガラスなどのコア事業の収益が拡大し、戦略事業も伸長しているため。新たな営業利益目標は従来比700億円増の2300億円(21年度2061億円)で、10年度の過去最高益更新が目前に迫ってきた。さらに30年度は3000億円を目標に据える。(梶原洵子)

23年12月期の営業利益目標の2300億円のうち、ライフサイエンスやエレクトロニクスなどの戦略事業で800億円(538億円)を稼ぐ計画とした。戦略事業の目標は100億円の上乗せ。この1―2年は戦略事業の拡大を加速させつつ、21年に急伸した塩ビやガラスなどのコア事業の利益を維持していくことが重要となる。

塩ビは、21年に北米寒波や中国環境規制強化による需給タイト化で市況が高水準で推移し、全社業績をけん引した。22年以降に市況は軟化するが、需給はタイトな状況が続くと予想。22、23年度に塩ビやカセイソーダなどの市況下落でそれぞれ150億円の減益影響を折り込んだ。東南アジアはインフラ整備などで潜在需要があり、インドネシアの新設備稼働により市場成長の取り込みを図る。

ガラスは、建築用ガラスで人員削減や北米事業売却などの構造改革効果が出はじめ、21年度に売価上昇と合わせて利益は改善した。自動車用ガラスは、22年度以降の自動車生産回復に伴う利益回復を期待するが、「19年水準の自動車生産への回復は23年頃」(平井良典社長)と見込む。

戦略事業はさらに成長を加速させ、30年度には全社営業利益の過半である1500億円に伸ばす。稼ぎ頭はバイオ医薬の開発・製造受託(CDMO)などのライフサイエンス。この数年、相次ぎ事業買収や生産拡大投資を実施した。平井社長は、「25年度目標の売上高2000億円(21年度1152億円)の達成を1年前倒したい」と意気込む。

達成に必要な投資の意思決定を終えた。刈り取りと同時に、30年を見据えた次の増強投資を検討する。

エレクトロニクス分野では、最先端半導体製造プロセス向け部材のEUVマスクブランクスで25年度に売上高400億円以上(現在百数十億円)を目指す。ウエハー上への回路図の転写に用いられる部材。22年に生産能力を倍増させ、24年に更に2倍とする。

10年度のテレビ用ガラスがけん引した過去最高益に対し、30年度に向けて戦略事業が過半を稼ぐ収益構造へ更なる変化を目指す。

日刊工業新聞2022年2月17日

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