ニュースイッチ

複数台のAGVを5Gで最適制御する。日本IBMの構想

枠組み描き迅速構築

日本IBMは、第5世代通信(5G)の中核を担う「5コア」やハイブリッド(混在型)マルチクラウド、エッジ(現場)側でリアルタイム処理を実現する「マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)」を含む、大きなフレームワーク(枠組み)を描き、その上で「5G×エッジコンピューティング」のソリューション開発に力を注ぐ。

MECで扱うエッジ端末や機器は、自動車や無人搬送車(AGV)、産業用ロボット、飛行ロボット(ドローン)など広範に及ぶ。これらを共通フレームワークに沿って、ターゲットとする領域で最適に制御する。

例えばAGVの制御。人工知能(AI)を組み込んだ自動走行型のAGVは高価なため、複数台を導入すると設備投資額が一気に跳ね上がってしまう。

「MECを使ってソフトウエアで集中制御すれば、低価格のAGVでも、複数台を自動走行のように賢く動かせる」(坂本佳史日本IBM技術理事)。

車の自動運転の場合、高精度な3次元(3D)地図に車両や交通情報を付加した「ダイナミックマップ」を用いる。同様に、低価格のAGVでもMECデータ処理し、ダイナミックマップで軌道修正すれば複数台を最適に制御できる。「こうした仕組みは通信インフラに高速・高信頼の5Gが必要だ」と坂本技術理事は語る。

共通基盤となるフレームワークでは、ソリューションをエンド・ツー・エンドでつなぐとともに、MECの後ろで動くクラウドや、基幹システムとの連携をはじめ全体像をどう描くかが問われる。

IBMは自社クラウド「IBMクラウド」や分散クラウド「クラウドサテライト」を持ち、これを推奨するものの、すでにユーザーが他社クラウドを使っていればそれを生かしたフレームワークを作る。フレームワークを用いることで「概念検証の実施後にいち早く本番環境に移行できる」(坂本技術理事)。

工場や物流倉庫向けフレームワークは、日本IBMが今春から開発に着手し、「アーキテクチャー(設計概念)を作っている最中」(青田健太郎日本IBMシニア・マネージング・コンサルタント)。これを含め、五つの注力分野に照準を合わせている。(編集委員・斉藤実)

日刊工業新聞2021年12月1日

編集部のおすすめ