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価格3倍…「半導体装置」新品待てず中古で代用も“品薄感”

中古半導体製造装置の価格が高騰している。複数の中古装置売買業者によると、一部ではコロナ禍以前と比べて価格が2―3倍になっているという。部材不足などが原因で新規装置の納期が長期化した結果、中古で代用したいとのニーズが高まっているためだ。半導体産業育成を図る中国による購入拡大の動きも価格上昇を後押している可能性がある。(張谷京子)

「新規装置と価格が同程度であったとしても、短納期であれば(中古の購入で)『時間を買う』選択をする顧客もいる」。三井住友ファイナンス&リース(SMFL)電子デバイス設備部の担当者は中古装置価格高騰の一因をこう分析する。

2020年以降、第5世代通信(5G)の普及やコロナ禍による巣ごもり消費の拡大、車の電動化などを背景に半導体製造装置の需要は急拡大した。ただ装置メーカーは部材の逼迫(ひっぱく)や人材不足などが原因で、受注に対して生産が追いついていない。新規装置の納期は元々1年超だったところが、2年超に延びているケースもあるという。

中古で品薄感が強いのが8インチ以下のウエハーに対応した数世代前の装置だ。三菱HCキャピタル関係者によると「i線の露光装置はコロナ禍前に7000万―9000万円程度だったところ、“最大瞬間風速”は2億円まで上昇した」という。

半導体業界ではこれまでウエハーの大口径化が進んだ結果、メモリーなどの大量同一品のデバイスを中心に12インチラインでの製造が主流だ。一方、車載用などで需要が広がるパワー半導体やアナログ半導体など少量多品種のデバイスは現在も6インチ、8インチラインでの製造が多い。これらの急ピッチの増産で6インチ、8インチ対応の装置需要が高まっている格好。半導体の業界団体SEMIによると、世界における8インチウエハー対応の前工程製造工場の生産能力は24年に20年比約17%増の月産660万枚となり、過去最高を更新する見通しだ。

中国の動きも中古価格を押し上げる。SMFL担当者は「オーバーホールなどを手がける韓国の技術会社などを経由して中国の半導体メーカーに納める例もあり、正確には把握できない」ことを踏まえた上で、日本からの中古装置輸出のうち中国向けは全体の「50%を超えている」と試算。独立系中古半導体製造装置売買業者の幹部は「8割」と見積もる。

同幹部は「中国の業者が中古装置を投機目的で買いあさっている」と明かす。中国では投資会社を後ろ盾とする半導体メーカーが資金力を生かし、技術系企業など第三者を通じて日本の中古装置売買業者に装置を注文することがあるようだ。中国政府はハイテク産業に対して莫大(ばくだい)な補助金を給付しているとされる。実需以上に中古装置が発注されている可能性がある。

中古装置の価格について、三菱HCキャピタルの関係者は「落ちる気配はまだない」とみる。一般に半導体不足解消の時期は22年後半から23年とも言われ、装置の取り合いは当面続きそうだ。

日刊工業新聞2022年1月31日

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