トヨタが取引先の負荷軽減で一手、部品メーカーの反応
材料高騰、価格転嫁前倒し視野
トヨタ自動車が生産水準維持に向け、サプライヤーへのより深い実態調査と負荷軽減対策に乗り出した。工場の稼働調整が続く中、2021年に打ち出した高い挽回生産計画に合わせて準備してきた取引先で負荷が生じているのがその理由だ。材料価格の部品価格への転嫁時期の前倒しなど、踏み込んだ対策を検討する。(名古屋・政年佐貴恵)
コロナ禍で他社が減産にあえぐ中でも、これまでトヨタは一定の生産レベルを維持してきた。それを支えたのがトヨタとサプライヤーの密接な関係だ。ある化学系メーカー社長は「突然の減産を通達する発注元が多い中、精度の高い計画を前もって伝えてくれる」と信頼を寄せてきた。
しかし、21年末からはコロナの新株の感染拡大や半導体不足などで、トヨタも断続的に生産調整を実施。ある部品メーカー幹部は「突然稼働停止の連絡が届くこれまでにない事態だった」と明かす。
トヨタは取引先に、22年度は1000万台を超える生産計画を示しており、1―3月も挽回生産で高水準の計画を立てていた。取引先各社は増産に備え人手や設備などを確保してきたが、ここへ来てそれが重荷になっている。ある駆動系部品メーカー幹部は「在庫を作りだめてきたが、断続的な稼働停止でもはや社内には置き場所がない」と漏らす。
こうした異常事態を受け、トヨタは実態調査に乗り出した。調達担当者の聞き取りでは「挽回に備えて準備した人手やモノ、場所などが各社の負担になっている」という声が多く寄せられたという。
資材価格高騰も業績を圧迫する。そこで、通常の市況変動分の部品への価格転嫁に加え、急騰している資材の価格上昇分や、物流費、人件費などをトヨタが負担する検討も始めた。毎年取引先に求めている部品価格の引き下げを一定期間先送りすることや、価格転嫁の反映時期の前倒しも視野に入れる。
最近、トヨタの調達担当者から連絡を受けた樹脂部品メーカー首脳は「さまざまな費用が軒並み上昇する中では、大変ありがたい」と安堵する。トヨタの熊倉和生調達本部長は「一次はもちろん、二次仕入れ先にも寄り添い1社でも多く支えたい」とより広範囲で実情を聞き取る考えだ。
一般的に受注先から発注元への“本音の要望”を引き出すのは至難の業。トヨタは調達担当者の育成も進め、より詳細に実情を把握。競争力を保ちつつ、取引先と共存できる供給網の構築を目指す。