“前代未聞”の資材高騰、営業最高益のトヨタは供給網を盤石にできるか
トヨタ自動車の2021年4―12月期連結決算は、同期として過去最高を記録した。ただ22年3月期は売上高を下方修正するなど、先行きを厳しく見る。半導体不足やコロナ禍による生産変動リスクのほか“前代未聞”の資材高騰が当面続くとの見方からだ。トヨタは部品各社の負担軽減などを実施しサプライチェーン(供給網)を盤石とすることで、変動に対処できる体制を構築する。
21年4―12月期は日野自動車やダイハツ工業を含めた連結販売台数が、日本を除く全ての地域で増加。地域別の営業利益は、最大市場の北米が前年同期比86・3%増の5039億円、アジアが同64・2%増の4899億円。一方、日本は販売台数が同9万台減の142万台だったが、車両輸出に伴う為替の円安効果で営業利益は同54・3%増の1兆2059億円に伸ばした。
トヨタが生産変動に見舞われながらも好調な業績を維持できたのは、10年以上前から積み上げてきた供給網の強靱(きょうじん)化策が大きい。毎月、場合によっては毎日という頻度で、サプライヤーと生産に関する情報を共有。計画を細かく見直すことでリスクの最小化に努めた。
それでも通期でみればマイナスの影響が避けられない。部品不足による現時点での減産分に、急な環境変化に伴うリスク分として10万台を織り込み、通期の生産見通しを21年11月予想比50万台減の850万台に引き下げた。
21年11月予想と比べると営業利益では減産が500億円の押し下げ要因になるほか、資材高騰の影響幅も300億円悪化し原価改善効果は150億円のマイナス。中でも資材高騰の影響は大きく、通期では6300億円の営業減益要因になる。トヨタ担当者は「通常は年2000億円程度なので、ケタ違いで過去にないレベルだ」と話す。
その中でも体力的により厳しい状況にある部品各社の負荷軽減のため、個社の事業環境を聞き取る活動を強化する。通常行っている市況変動分のカバー以外に、急騰した分の一部費用の負担も視野に支援策の検討を始めた。そのコストも上積みされればトヨタにとって一時的には利益悪化要因となりかねないが、将来も見据えた供給網全体のさらなる強化につなげる。