「6G」で身体感覚を遠隔地の他者に伝える。ドコモが実現目指す技術の使い道

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人の腕や手の動作をセンサーで計測し、同じ動きをロボットが即座に再現する

NTTドコモが通信ネットワークを介して人の動作を精緻に共有する技術の開発を進めている。2030年代の実用化が見込まれる第6世代通信(6G)の活用により、身体の感覚や動きを遠隔地にいる他者へ即時に伝えることを目指す。実現すれば、一流の職人や芸術家などの技能を効果的に伝承できる可能性が出てくる。動作の再現に必要な機器の普及といった課題を乗り越え、思い描く未来に近づけるか試される。(編集委員・斎藤弘和)

人間の神経の反応速度を、通信ネットワークの速度が超える―。ドコモが21年11月に公表した白書「5Gの高度化と6G」の第4版には、このような記述がある。

人が脳で考えた情報を身体に反映させるまでの時間は、約20ミリ秒とされる。一方、ドコモは6Gにおいて、エンドツーエンド(E2E、通信経路の両端)で遅延を1ミリ秒以下に抑えることを想定。そうなれば、人の動作を他者へ即座に伝えられる可能性も高まる。

ドコモはこうしたビジョンに沿う形で、身体の動きを精緻に共有するための情報基盤を開発し、17日に公表した。センサーなどで得た動作データを、他者やロボットなどに伝える際に用いる。例えば人の腕の動作を把握し、それと同じようにロボットアームを動かせる。ピアノ教室の受講生に、講師による演奏時と同じ指の動きをさせることで、上達を促すといった利用例も考えられる。

ただ、「センシング(計測)は可能でも、アクチュエーション(駆動)が十分にできない。駆動のデバイスが必要」(ドコモ担当者)な点が課題という。楽器の演奏のような繊細な動きを他者で再現させるための駆動機器の実用性を高められるかは、現時点では見えにくい。人が装着する際には安全性が問われる。倫理や法制度の観点で問題がないかの検証も求められそうだ。

そこでドコモはデバイス開発者向けに、同基盤へ簡易に接続できるソフトウエア開発キット(SDK)の提供を22年度に始める予定。計測や駆動の技術に明るい協業企業を増やす狙いだ。人の動作を共有するサービスの実用化は、5Gでも可能な範囲は早期に実現したい考えで、25年の大阪万博での技術のお披露目も視野に入れている。

ドコモは自社のビジョンを単独で達成することは難しく、協業企業の力が必要になる。6Gの白書第4版の公表以前から、触覚を含む身体感覚を伝達する技術を持つH2L(東京都港区)と組み、カヌーの一種であるカヤックを遠隔操作する実証実験を行うなどしてきた。今後は、従来の協業における成果や課題を整理しつつ、駆動機器のメーカーとの連携の実効性を高めていくことが望まれる。

日刊工業新聞2022年1月20日

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