総還元性向を50%に引き下げる東京ガス、株式市場から求められること

30年までに2兆円、戦略投資厚く

  • 0
  • 0
内田高史社長

エネルギー業界は2050年の脱炭素に向け激変期にある。東京ガスは戦略投資を厚くするため、22年3月期の期末配当から総還元性向(連結純利益に占める配当と自社株買いを合わせた比率)を60%から50%に引き下げる。

それにより、ここ数年の当期利益は平均600億円のため約60億円を投資に回せる。財務体質が向上し借入余力も増える。内田高史社長は21年11月26日、30年までに2兆円を戦略投資に充てる方針を発表し「調達はグリーンファイナンスを重要視、それでも足りない分は資産の入れ替えで出た資金を充てる」とした。

20年11月末に内田氏が総還元性向引き下げの方針を打ち出し、株価は11月半ばの2600円台から2200円台まで下げた。「『成長側に回すのなら、どう使い、いくら利益を上げるのか明確にしてほしい』と多くのお叱りを受けた」と南琢執行役員財務部長は言う。投資家との対話を重ね、予定より5カ月遅れ9月に公表した。10月の第2四半期決算では年間配当予想を前期に比べ5円増配し65円とした。減配の不安の声が出る中「『安定配当と緩やかな増配』を基本とするメッセージ」(南執行役員)だ。

総還元性向50%でもエネルギー業界では高いレベル。大阪ガスは30%。だが同社は3月公表の中計で、部門別の経営指標にROIC(投下資本利益率)を取り入れ資本の効率運用を明確化、株式市場は好感した。一方、東ガスは慎重だ。11月26日の発表で4月に疑似分社制度を導入し、各部門のシナジーと全体最適を重視するとした。ただ「ROICも検討項目だが、まずはカンパニー利益。PL(損益計算書)の向上から」(内田社長)と言う。

また20年3月に出した中計の23年3月期目標「ROA(総資産利益率)4%、ROE(自己資本利益率)8%が底となる水準を目指す」としているものの、21年3月期はROA1・9%、ROE4・3%。大ガスのROA3・6%、ROE7・8%と比べても見劣りする。

総還元性向を引き下げ、戦略投資を厚くするのなら資本効率の高い投資を市場は求めている。大和証券の西川周作シニアアナリストは「自社の強みはどこにあるのか、ここなら伸ばせるという説明が必要。既存分野は資本効率で管理し、新規分野は売り上げで見ることも一つの方法」と言う。

日刊工業新聞2021年12月2日

関連する記事はこちら

特集

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのためにクッキー(Cookie)を使用しています。オプトアウトを含むクッキーの設定や使用の詳細についてはプライバシーポリシーページをご覧ください。

閉じる