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日本製鉄の敵対的TOBを経て変革進める東京製綱が移転、賃料節減ともう一つの理由

日本製鉄の敵対的TOBを経て変革進める東京製綱が移転、賃料節減ともう一つの理由

東京製綱本社には創業時会長だった渋沢栄一による「共存共栄」の扁額が掲げられている(手前は原田社長)

東京製綱はリモートワークの普及などに伴う働き方改革で、2022年8月に本社を東京都中央区日本橋から江東区永代に移転する。オフィス面積を現状比3割削減し、賃料の節減につなげる。同社は日本製鉄による敵対的TOB(株式公開買い付け)を経てガバナンス(企業統治)変革を推進中。22年に135年を迎えるのを機に、創業時に会長だった渋沢栄一ゆかりの地に移転。その経営哲学にあやかって改革を前進させたい考えだ。(編集委員・山中久仁昭)

東京製綱が本社を移転するのはオフィスビル「渋沢シティプレイス永代」。「江東区にはかつて深川工場もあった。当社が初心に返り、心機一転を図るには最高の地」と原田英幸社長は力を込める。

在宅勤務はコロナ禍を機に製造業の営業・管理部門などでも急増。感染者数の減少で出社率は増えたが、リモートワークは一定の割合で定着した。同社は「最低週1日程度のリモートワークが、今後進めるDX(デジタル変革)と合わせて十分可能と判断して移転を決めた」(総務部)。

本社を移す渋沢シティプレイス永代は渋沢栄一の邸宅跡地に建つ

移転により内装などが一新され、健康的でより働きやすい環境に改善されそうだ。東京駅八重洲口などからほど近い現本社に比べ、ターミナル駅までは多少時間がかかるが「社員、取引先を含めて総じて肯定的に受け止められている」(同)。

渋沢シティプレイス永代は明治期に実業家、渋沢栄一の本邸があった場所。東京製綱が1897年に開設した国内初のワイヤロープ生産拠点の跡地からも近い。

同社が創業精神に立ち返るのは、21年に日鉄のTOBに翻弄されたことが大きい。約20年間トップだった田中重人前会長(日鉄OB)らの硬直した体制とは決別し、生え抜きで50代の原田氏が社長に就任。新たに誕生した取締役10人には社外6人が含まれる。

23年度売上高で650億円、営業利益で30億―40億円を掲げる中期経営計画も策定した。渋沢栄一の「共存共栄」の精神を踏まえ、社会に不可欠で持続可能な真に強い企業に生まれ変われるか注目される。

日刊工業新聞2021年12月28日

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