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安価な「光記憶素子」作製へ、ラムダ型五酸化三チタンの高品質単結晶薄膜を形成

東北大が成功
安価な「光記憶素子」作製へ、ラムダ型五酸化三チタンの高品質単結晶薄膜を形成

五酸化三チタンの結晶薄膜(東北大提供)

東北大学の吉松公平講師と組頭広志教授らは、準安定相であるラムダ型五酸化三チタンの高品質単結晶薄膜の形成に成功した。五酸化三チタンは光刺激で最安定相のベータ型と準安定相のラムダ型の間で結晶構造が切り替わる。酸化チタンという安価で安全な元素で光記憶素子を作製できる可能性がある。

パルスレーザー堆積法という成膜技術で5ミリメートル角の基板にラムダ型五酸化三チタンを形成した。厚みは約100ナノメートル(ナノは10億分の1)。従来は数ナノメートルサイズのナノ粒子しか合成できていなかったという。ナノサイズからミリサイズになり100万倍ほど大きくなった。

五酸化三チタンは光や電流、圧力などの刺激で結晶構造が変化する。ラムダ型は大きな刺激があると最安定相に変化する準安定相。今後、最安定相と準安定相の性質の差やスイッチング速度を明らかにして記憶素子などへの可能性を探る。

現行の書き換え可能な光ディスクはアンチモンやテルルなどの元素を利用していた。酸化チタンで代替できるとコストを抑えられる可能性がある。

日刊工業新聞2021年12月21日

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