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日立化成を買収した昭和電工、世界で戦うために据えた経営指標

昭和電工は2020年に日立化成(現昭和電工マテリアルズ)を買収し、事業ポートフォリオを大きく変えてきている。日立化成は半導体材料で高いシェアを持ち、リチウムイオン電池用負極材などのモビリティー事業も拡大局面にある。昭和電工にとって大きな成長ドライバーを獲得する機会となった。両社は23年1月に法人格を完全統合する予定で、「世界で戦える会社」を目指す。

 

昭和電工の高橋秀仁取締役常務執行役員は「この規模で親和性のある企業が出てくることはそうはない」と買収の意義を語る。買収額は約9600億円に上る。最終判断時には新型コロナウイルス感染拡大が始まっていたが、「事業価値は傷んでいない」(高橋取締役常務執行役員)とみて実行した。

 

世界で戦うための指標として、25年の数値目標を売上高に対するEBITDA(利払い税引き償却前利益)比率20%(20年度6・0%)、売上高1兆6000億円(同9737億円)に据えた。

 

利益改善に向けて最も重要なのは成長だ。9、10月に公募増資と第三者割当増資で資金を調達し、うち700億円超を昭和電工マテリアルズの投資に充てる。「半導体材料への引き合いは強まっている。まずは作り負けしないことだ」(高橋取締役常務執行役員)。

 昭和電工は各事業を4分野に分けて役割を明確化し、ポートフォリオマネジメントを強化することで、収益を拡大する。半導体やモビリティーなどの「コア成長事業」は積極投資で大きな成長を狙う。黒鉛電極や石油化学などの「安定収益事業」は安定した利益を稼ぎ、全社の投資資金を捻出。「基盤事業」はコア成長・次世代事業の技術革新を支える。

 

一方、両社は21年に入り、アルミ缶やプリント配線板、鉛蓄電池などの売却を決めた。

 

統合新会社が目指すもう一つの姿が「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」だ。高橋取締役常務執行役員は「これからは儲かる会社でなければ、良い会社になれない」と指摘する。温室効果ガス排出量削減などへの投資負担は大きく、利益率を上げなければ対応できない。統合新会社で、グローバル企業として高みを目指す。


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日刊工業新聞社2021年11月4日

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