日立化成が上場廃止、いよいよ昭和電工傘下でシナジー問われる

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日立化成の18日終値(東証アローズ)

日立化成の株式が19日付で上場廃止となった。昭和電工による買収に伴うもので、海外における競争法審査の遅れの影響はあったが、買収手続きはほぼ計画どおりで、23日に完全子会社となる。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり事業環境は厳しい中、昭和電工は今後どのように日立化成とのシナジーを図るのか。日立製作所傘下から離れる日立化成は、培った力を発揮できるのか−。

日立化成の2020年3月期連結決算(IFRS)は半導体や自動車の市況低迷や新型コロナが響き、営業利益が前年同期比36・4%減の231億円だった。経常的な指標とする調整後営業利益率は5・6%。目標に掲げる「10%」には遠く及ばない結果となった。

日立化成の創業は1912年の日立製作所の油性ワニス研究開始にさかのぼる。62年に日立化成工業(現日立化成)として独立、70年には上場を果たし「日立御三家」の一角として存在感を放ってきた。自動車部品やライフサイエンスなどに事業を拡大、技術サービスの展開も広がったことから13年に社名から「工業」を外した。

リチウムイオン電池の負極材に使われる人造黒鉛や半導体用封止材では、トップクラスのシェアを誇る。半導体分野では、18年に半導体実装材料や装置メーカーとコンソーシアム「JOINT」を発足するなど、攻めの姿勢を見せていた。

ライフサイエンス分野では、再生医療の開発・製造受託(CDMO)で17年に米社、19年に独社を完全子会社化、世界有数の規模となった。昭和電工が日立化成買収を決めたのも、注力分野の一つであるライフサイエンス事業の強化につながると判断したからだ。

一方で日立製作所は近年、注力するIoT(モノのインターネット)との関連性が低い事業の切り離しを探ってきた。目をつけたのが業績が低迷する日立化成だった。スマートフォンの需要が一巡するなか、スマホ偏重の体質から脱却できず、調整後営業利益率は低下傾向が続く。電池材料やライフサイエンス分野でM&A(合併・買収)を進める一方、投下資本利益率(ROIC)は19年3月期が8・3%、20年3月期が5・8%と低水準だ。

とどめを刺したのが18年に明るみに出た、検査データ改ざんなどの品質不正だ。特別調査委員会の報告書によると、70年代から続いており、国内全事業所で行われていた。取り扱い製品の約3分の1が不正行為の対象となっていた点が発覚。信頼は失墜した。

日立製作所による売却意向が表面化した後、複数の化学メーカーが買収を検討したとされるが、TOB(株式公開買い付け)を期待された日立化成の株価高騰の影響もあり撤退した。現在、株価は19年初頭の約3倍となる4600円台で推移している。

独自の技術を持ち、日立製作所傘下にあってかねて独立心が強いと見られてきた日立化成。日立製作所の意向もあり、グローバル市場で独自で戦える基盤づくりを進めてきた。今後は昭和電工傘下でシナジーを図るが、関係者からは両社のカルチャーの違いを懸念する声も聞かれる。

機能性化学メーカーになるチャンス

昭和電工の社運をかけた日立化成の買収は、新型コロナウイルス禍で逆風のスタートとなった。足元で昭和電工は黒鉛電極などの収益が急速に悪化している。1―2年前は稼ぎ頭だったが、鉄鋼需要が大幅に冷え込み、販売が減少した。ここにウイルスの感染拡大が追い打ちをかけ、鉄鋼産業と主要顧客である自動車産業の回復には不透明感が漂う。

昭和電工の2020年1―3月期連結決算の営業利益は、前年同期比94・6%減の24億円。20年12月期業績予想は未定とした。こうした状況で、約9600億円の買収費用と巨額の「のれん」が重くのしかかる。

巨額買収は新型コロナ禍で財務状況を厳しくしたが、事業構成の面では昭和電工にとって一息つける材料と言える。日立化成はコロナ禍でも堅調な需要が期待できる半導体や情報電子材料に強い。5月の決算会見で、昭和電工の竹内元浩常務執行役員最高財務責任者(CFO)は、買収について「第5世代通信(5G)や情報通信技術の競争力が増した」と説明した。

昭和電工の狙いは、情報電子分野のバリューチェーンを川下へ広げ、グループ一貫で先端材料を提供できる体制を整えることだった。ここに新型コロナでリモートワークや生産遠隔管理などの重要性が急速に高まり、買収で同分野の提案が図れることは大きな強みになる。

さらに現在の危機的な状況下で、しがらみにとらわれがちな不採算事業の整理やコスト構造改革を断行しやすい環境になっている面もある。竹内常務執行役員は「すでに200億円を超えるコスト面のシナジーを出すネタが出ている」と強調する。

買収すれば終わりではなく、いかに統合効果を出せるかで成否が決まる。逆境の中でやるべき改革を粛々と進め、両社で新たな価値を創出していくことが求められる。

昭和電工の森川宏平社長は、買収を発表した19年12月の会見で、「日立化成と一緒になり、将来に期待が持てる企業であり続ける」と決意を語った。市場の期待値を示す時価総額は、当時、昭和電工は日立化成の2分の1強。そして昨日、日立化成の株式は当時より545円高い4625円で最終日の取引を終えた。

総合化学メーカーは業容が分かりにくく、相対的に株価が低いが、ここも変えていく必要があるだろう。

森川社長は同じ会見で「世界トップクラスの機能性化学メーカーになるチャンスを逃したくない」と語った。新型コロナの影響で予期せず大型買収を成功させるハードルは上がったが、世の中のニーズは変化を続ける中で、先端材料の技術領域が広がれば事業成長の大きな推進力となるはずだ。トップのやりきる力が問われる。

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(取材=梶原洵子、江上佑美子)

日刊工業新聞2020年6月18日/19日の記事を一部修正

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