ライオンが全社導入する健康リスクのAI予測システムの全容
ライオンは国内グループ全社員を対象に医科と歯科の両健康診断データをもとに将来の健康リスクを予測するシステムを2022年春に導入する。独自の人工知能(AI)を使うなど健康経営にデジタル変革(DX)を採り入れて情報を可視化。歯ブラシなどを主力商品に予防歯科の習慣を提唱する企業として、まず社内の健康行動を変えるきっかけにする。得られた知見を活用し、将来の新たなビジネスにもつなげる。
導入するのは「個人別健康情報システム」。医科と歯科の両健診データを統合し、AIを使って血糖、血圧、肥満、虫歯、歯周病の5項目を分析。現在の生活習慣を続けた場合、血糖、血圧、肥満は3年後に、虫歯・歯周病は1年後にどう変化するか予想確率を数値で示す。国内のライオングループ社員約4000人を対象とする。
ライオンは20年前から全社員を対象に身長や体重などを計る一般的な健康診断に加え、虫歯の有無や歯周ポケットの深さを測る歯科検診を実施。それぞれの情報は個別にフィードバックするほか、データを蓄積してきた。
個人別健康情報システムを構築した同社は20年、特定の事業所に対象を限定して検証。将来リスクを伝えて今後の行動変容の意思を調査したところ、8割が健康維持・改善のために行動を変える意思があると回答した。
さらに歯周ポケット4ミリメートル以上の状態はフロス未使用者に多いことも分かり、フロスを使った予防習慣の啓発を全社で導入した。
口腔科学で健康を考える同社は19年から健康経営「GENKIアクション」を展開し、同システムの構築を推進。21年1月には業務の効率化と新ビジネス創出を目指した「DX推進部」を新設した。
日刊工業新聞2021年12月7日