身近になった近視・遠視の手術。どんな方法があるの? 

おすすめ本の抜粋「眼科119番 第3版 一家に一冊…目の薬箱」

  • 0
  • 3

近視も治せる時代に

昨今のレーザーによるハイテクノロジーと医療技術の進歩により、近視・遠視・乱視などの屈折異常が、手術で治せる時代になりました。さらに改良がなされ、術後の痛みが少なく、視力の回復も早い、レーシック(LASIK)やスマイル(SMILE)、ICLという術式が開発され、現在世界各国で年間数百万の人がこの手術を受けて、快適な生活を送っています。ここではこれらの手術について解説します。

屈折矯正手術の種類と手術方法

近年、近視・乱視の手術は一般的に行われるようになりました。手術としては、大きく分けて、角膜にレーザーを照射して近視を治す方法と、目の中に眼内レンズを入れて矯正する方法があります。

①レーシック
角膜による屈折矯正手術の代表的なものとして、レーシックがあります。レーシックはレーザーで近視や遠視、乱視などの矯正をする手術で、1990年に開始されてからすでに30年の歴史があり、これまで5000万人以上の方がこの手術を受けたといわれています。角膜にフラップという蓋を作り、フラップを開けた後にエキシマレーザーという紫外線レーザーにより正確に角膜を削ってカーブを変え、その後フラップを戻します。痛みはほとんどなく、手術時間も10分ほどで終わる安全な手術です。ほとんどの方は3時間後には、メガネやコンタクトレンズをしているのと同じくらいの視力に回復します。通常は、近視や乱視により視力が落ちてしまった若い方がこの手術を受けますが、白内障手術の後に残った近視や乱視に対しても、とても正確に修正することができます(これをタッチアップレーシックといいます)。

現在のエキシマレーザー装置は、ウェーブフロント技術を利用したレーシックに対応しています。目には近視、遠視、乱視以外に高次収差と呼ばれる微小な光学的なゆがみがあります。ウェーブフロントと呼ばれる高次収差を含む目の状態を測定し手術時に利用することで、術後の見え方をよりよくするテクノロジーです。

従来は角膜のフラップを作製するにはマイクロケラトームという電動カンナのような器械を用いていましたが、現在では主にレーザー(フェムトセカンドレーザー)によって行われています。レーザーを用いることにより、大きさ、厚みが一定な角膜フラップを安全に作ることができます。

②SMILE
SMILEは、フェムトセカンドレーザーを角膜実質の切除にも使用し、近視・乱視を矯正する方法です。エキシ マレーザーでは角膜実質を蒸散することによって切除しますが、角膜をシート状(レンチクル)に切って、2〜3ミリメートルの切開層から摘出します。SMILEは小さな傷口で手術を行うことができ、レーシックのようなフラップを作製しないため、外傷に強くドライアイも生じにくいとされています。

③ICL(有水晶体眼内レンズ)
角膜にレーザーを照射して近視を矯正するレーシックに対して、角膜には触れず、水晶体を残したまま眼内レンズを目の中に入れることにより視力矯正するのが、有水晶体眼内レンズICLです。

ICLは、角膜を削らない視力矯正法として、レーシッ クが登場した1990年代よりも前に開発が始まっていた歴史ある治療法です。ICLは、眼球の中、虹彩と水晶体とのわずかな隙間に小さく折りたたまれたレンズを入れ、視力を矯正します。矯正できる度数の範囲はとても広く、強い近視や乱視の方(遠視も可能)にも適しています。

ICLは、従来からの眼内レンズ素材(アクリル)とコラーゲンを合わせた親和性の高い素材、「コラマー」でできており、ソフトコンタクトのように柔らかく、無色透明です。有害な紫外線をカットし、経年変化で汚れたりくもったり破れることはありません。つまり、半永久的に使用可能な優れたレンズです。

ICLはとても精度の高い優れた視力矯正手術ですが、目の中の水の流れが悪くなることから、約1〜2%白内障が進行するというリスクがありました。この合併症を減らすためレンズの中央に極小の穴をあけたHole ICLが開発されました。これにより白内障のリスクが低下し、より安全性が高まりました。

●ICL手術の流れ

点眼麻酔の後、周辺の角膜を3ミリメートル程度切開します。その部位から専用のインジェクター(筒)の中に折りたたんだICLをゆっくり丁寧に目の中に挿入します。通常片眼10分程度で終了し、手術中に強い痛みを感じることはありません。術後は2時間ほど院内で休憩を取ったのち、帰宅していただきます。入院の必要はありません。

●ICLのメリット

・レンズを取り出せるから安心
ICLは、レンズを目の中に入れることで視力を矯正する「足し算」の治療法です。レーシックの場合一度削った(引き算)角膜を元に戻すことはできませんが、ICLの場合、万が一、不具合が生じた場合、レンズを取り出せば目は元の状態に戻すことが可能です。

・メンテナンスフリーだから便利
術後、一定期間の定期検診(通常は1年間)を受けていただくだけで、コンタクトレンズのようにレンズを洗浄したり交換するなどのメンテナンスは不要です。

・幅広い範囲の近視・乱視に対応
レーシックの適応にならない強度の近視や角膜が薄い方、角膜に不正な乱視がある方にも、ICLは適応の可能性があります。

・ドライアイの原因になりにくい
レーシック術後のドライアイの原因のひとつに、手術により角膜の表面にある知覚神経(三叉神経)を傷つけることが報告されていますが、ICLの手術は切開創が3ミリメートルと非常に小さいため、ドライアイになる可能性は極めて低く安心です。

・ライセンスを取得した執刀医のみが手術を行うから安心
資格不要のレーシック手術と違い、ICLは認定を受けた執刀医が行います。ICLの認定には、講習を受講し、インストラクター医師の立会いのもとで手術を行い、技術を認められなければなりません。

ノーベル賞とSMILE手術

2018年のノーベル物理学賞に超短パルスレーザーのジェラール・ムル博士が選ばれました。博士は1991年にミシガン大学の教授としてレーザー研究を始められ、SMILEで使用するフェムトセカンドレーザーVisuMax(ビジュマックス)の心臓部のレーザーを大手自動車部品メーカーと共同研究、その後母国フランスに帰り、欧州の極超短パルスレーザー研究を率いて来られました。ノーベル賞の選考理由の中に、SMILE手術の実用化が挙げられています。

(「眼科119番 第3版 一家に一冊…目の薬箱」p.234-237より抜粋)

<書籍紹介>

ディスプレイを見る機会が多い現代人の眼は、常に酷使されている。加えて高齢社会を迎え、白内障や緑内障といった加齡性疾患の問題もクローズアップされている。本書では、身近な眼疾患や日頃目について抱く疑問などをQ&Aでやさしく解説。近視矯正手術や最先端治療についても詳細情報を提供する。

書名:眼科119番 第3版 一家に一冊…目の薬箱
編著者名:中村友昭
著者名:名古屋アイクリニック、中京グループ眼科医師
判型:四六判
総頁数:268頁
税込み価格:1,650円

<執筆者>
中村友昭(なかむら ともあき)
所属 名古屋アイクリニック院長
専門領域 角膜疾患、ドライアイ、屈折矯正手術
現在の研究分野 屈折矯正手術における視機能

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
Ⅰ 目の仕組み
Ⅱ よくある眼疾患から緊急疾患まで
緊急疾患/よくある眼疾患/子どもの眼疾患/若者に発症する目の病気/加齢性疾患
Ⅲ 屈折異常
Ⅳ その他の目の疾患と検査
目と全身疾患/現代人と目/スポーツと目/眼科の検査
Ⅴ 眼科治療最前線

関連する記事はこちら

特集