「解体ではなく進化」東芝・分割上場へ予想される曲折
東芝は2023年度下期にグループ全体を事業別に3分割してそれぞれ上場させる。エネルギーやインフラ、昇降機などのインフラサービス会社と、パワー半導体やハードディスク駆動装置(HDD)などのデバイス会社、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)や東芝テック株式を管理する東芝の計3社に再編する計画。
東芝の綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)は11月12日の会見で「それぞれの市場にフォーカスし、執行部が早い判断でグローバルに勝ち抜ける経営体制にする」とスピンオフ計画の目的を説明した。そして「(東芝グループの)解体ではなく、未来に向けた進化だ」と強調した。
今回の大胆な会社分割計画は社外取締役で構成する戦略委員会が主導した。約5カ月間投資家らとの対話や検討を重ねて導き出した、株主価値顕在化に向けた結論だという。
これまでも総合電機メーカーとして時間軸や投資規模が大きく異なる複数の事業をまとめて経営する難しさを指摘する声は多くあり、古くて新しい計画自体にサプライズは少ない。
にもかかわらず、日本の大企業で初めてと言われるスピンオフ計画に対する世間の空気が賛成ばかりでないのは、アクティビスト(物言う株主)の意向が強く反映された一方で、従業員など他のステークホルダーは蚊帳の外に置かれた印象が拭えないからだろう。
2年後の分割上場に向けて、今後も曲折が予想される。大株主のシンガポール投資ファンドの3Dインベストメント・パートナーズは今回のスピンオフ計画について「支持しない」と表明した。同じく大株主のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントは賛否を明らかにせず態度保留のままだ。
東芝は22年1―3月期に臨時株主総会を開き、会社分割に関して株主の意見を聞く方針だ。もしもそこで反対多数となれば、計画は白紙に戻り、創業146年の名門企業の迷走が続くことになる。