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本業とのシナジー薄い?オートバックスが見守りサービスを立ち上げた理由

本業とのシナジー薄い?オートバックスが見守りサービスを立ち上げた理由

大分県ではAIを用いた河川水位監視カメラの実用化を目指す(由布市と連携した実証実験)

オートバックスセブンは2019年、人工知能(AI)などを用いた見守りサービスのブランド「WEAR+i(ウェアアイ)」を始めた。店舗でのカー用品販売や車検といった主力事業とのシナジーは薄いようにも見えるが、幅広い分野でのAI活用を図ることで、消費者との接点を増やしたり自動車以外の領域への事業展開に役立てたりしている。

オートバックスセブンはタイヤやカーエレクトロニクスなど六つのカテゴリーに加え、第7(セブン)の商品を探し続ける方針を掲げる。ウェアアイもその取り組みの一つで、地域課題の解決などを目指している。大分県や同県内の自治体とは包括連携協定を締結。AIを用いた河川水位監視カメラの実用化に向けた実証実験などにも取り組んでいる。

地域課題の解決に向けたテーマの一つが、高齢者支援だ。19年には高齢者らを対象に、対話型AIを搭載した見守りロボット「ZUKKU(ズック)」を発売した。高齢者が話しかけると、ズックがAIを介して返事をする。

AIが会話から体調変化などに関するキーワードを抽出。離れて住む家族らのスマートフォンに連絡する仕組みも搭載している。

ウェアアイなどの取り組みを統括するICTプラットフォーム推進部の八塚昌明部長は「会話のキャッチボールができなければ面白くない。今はシナリオに沿った会話が中心だが、より自然で豊かな会話ができるようにしたい」と話す。今は同社の社員がズックに日常会話などを教えることで対話型AIの高度化を目指しているが、「いずれはお客さまとの会話を機械学習として生かせるようにしたい」と構想を描く。

ウェアアイに先立ち、17年には日本IBMのAI「ワトソン」を用い、タイヤの状態を診断するサービスを始めた。利用者がスマートフォンで自社のタイヤを撮影し、画像を専用サイトにアップロードすると摩耗の度合いを3段階で表示する。

投稿画像は診断向けの学習データとして2次利用する。タイヤ交換などを促すほか、店舗外で顧客との接点を持つことで、自社の認知度向上にもつなげる狙いだ。

八塚部長は「デジタル技術を活用し、時代に沿ったサービスを提供しなければ顧客の支持は得られない」と強調する。「うまくいけば本業にフィードバックし、社内のデジタル変革(DX)にも生かせる」と語る。(江上佑美子)

日刊工業新聞2021年11月12日

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