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百花繚乱、日本のロボットベンチャーは世界で通用するか
家庭、産業用とも開発相次ぐ
ロボット関連のベンチャー企業が続々と登場している。特に企業の案内業務や家庭内で活躍しそうなコミュニケーションロボットでは、ベンチャーが「花盛り」だ。一方で、工場で働く産業用ロボットの制御分野でも、従来できなかった制御技術で存在感を発揮するベンチャー企業が出てきた。
音声対話の技術が進化したことで、人と対話するコミュニケーションロボットが増えてきた。ソフトバンクの「ペッパー」やシャープの「ロボホン」などが有名だが、それら大手企業に負けないロボットをベンチャー企業も開発している。
2015年に創業したMJI(東京都港区)の「Tapia(タピア)」は、顔の部分がタッチパネルになっており、音声対話と並行して対話に活用できる。音声は日本語、中国語、英語に対応。価格は9万8000円(消費税抜き)に抑え、一般的なコミュニケーションロボットと比べて低価格にしている。
永守知博代表取締役によると、タピアは人工知能(AI)を使った画像認識技術に強みを持つ。すでに約2000万の画像データを学習済み。顔の画面を使ってじゃんけんをしたりでき、国内ではハウステンボス(長崎県佐世保市)が接客で採用している。
ユカイ工学(東京都新宿区)は2007年設立。同社の「BOCCO(ボッコ)」は家族間のコミュニケーションを支援するロボットだ。ボッコに話しかけたメッセージを音声やテキストでスマートフォンに送ったり、スマホからボッコへ話しかけたりできる。青木俊介CEOは「親子間のやりとり支援を想定した」と説く。
ボッコはセンサー類とも連携している。人やペットがボッコの前を通るとスマホへ通知する「人感センサ」や、玄関や窓の鍵の開け閉めを通知する「鍵センサ」、部屋の温度や湿度を通知する「湿度・温度センサ」などの機能も持つ。仕事などで留守の間でも、家庭内の見守りができるというわけだ。
2010年設立のハタプロ(東京都港区)はフクロウを模した手のひらサイズの案内ロボット「ZUKKU(ズック)」を開発した。三越伊勢丹ホールディングスやパルコ、オートバックスセブンといった小売店と共同で、ズックを使って来店者の年齢や性別といった属性を把握する実証実験を進めている。得たデータを売り場作りなどのマーケティングに生かしていく。
ズックも低価格と高機能を売りにする。伊澤諒太社長は「本格展開時には数万円にしたい」という。ズックで得たデータは米IBMのAI「ワトソン」の応用プログラムインターフェース(API)を活用して分析する。ハタプロは、ズックの大きさや形、性能を一つに定めずユーザーに応じてアレンジする方針。使い勝手でも差別化する。
制御系でもベンチャーが躍進
高い制御技術によって、産業用ロボットが従来入れなかった分野へ活用させているベンチャー企業も出てきた。LinkWiz(リンクウィズ、浜松市中区)は2015年創業。産業用ロボットが自動で物体を認識し、動きを補正するソフトウエアを得意とする。
一般的な産業用ロボットは、同じ動作を繰り返すことに長けている。同じ位置に拾わせたい部品を置けば、何度でもしっかりつかんで拾う。だが、1センチメートルでも部品を置く位置がずれているとつかめない。人間のように、部品の位置がずれていても目でずれを認識してアームの動きを補正するということをしていないからだ。
産業用ロボットでは、人間が動きを教える教示(ティーチング)という作業がある。ティーチングペンダントという独特なコントローラーを使って一つ一つの動きを登録していく。ティーチングはスキルを持った技術者が行うもので、時間と手間がかかり人材確保にも苦労する。
リンクウィズの「Lロボット」はティーチングの自動生成ソフトだ。3次元認識のカメラと産業用ロボットを連携させて、ワーク(加工対象)の隈の位置をしっかり把握しつつ、溶接や塗装、切断、検査などの作業をロボットが自動で行える。吹野豪社長は「ワークにはわずかな誤差がある。このずれをどう補正するかがロボット化への課題だった」と語る。
ロボットで3次元的に自動検査ができるソフト「Lクオリファイ」も、検査治具を一つ一つ作るコスト、手間を削減できるものとして引き合いが多い。
人手不足に悩む物流業界で、物流施設の自動化にロボットを活用する動きが進んでいる。自動倉庫や仕分け装置、搬送装置などで物流現場の自動化が進んだ。だが、発送先別に商品を詰め合わせる「ピッキング」など一部の作業はいまだ人海戦術に頼っている。
2011年に創業したMUJIN(東京都墨田区)は、産業用ロボットと3次元カメラを使ってピッキング作業の自動化を実現するコントローラー「ピックワーカー」を展開する。
ピックワーカーではティーチングなしに、ロボットがバラバラに置いてある箱を的確につかむことができる。狭い場所でも干渉物を登録しておけば、勝手に回避する動きを行う。滝野一征CEOは「倉庫のピッキング作業での人不足は喫緊の課題。ロボットは24時間文句言わず働くので生産性向上にもつながる」と笑う。
MUJINのピックワーカーは通信販売のアスクルなど国内企業に採用されたほか、中国のインターネット通販大手JD.com(京東商城)が新設する全自動大型物流センターへの導入も決まった。
MUJINは従業員35人のうち20人強が外国籍。米国、中国、ウクライナなど10カ国ほどから優秀な技術者が集まる。滝野CEOいわく「日本にあるグローバル企業」という点もユニークだ。
音声対話の技術が進化したことで、人と対話するコミュニケーションロボットが増えてきた。ソフトバンクの「ペッパー」やシャープの「ロボホン」などが有名だが、それら大手企業に負けないロボットをベンチャー企業も開発している。
2015年に創業したMJI(東京都港区)の「Tapia(タピア)」は、顔の部分がタッチパネルになっており、音声対話と並行して対話に活用できる。音声は日本語、中国語、英語に対応。価格は9万8000円(消費税抜き)に抑え、一般的なコミュニケーションロボットと比べて低価格にしている。
永守知博代表取締役によると、タピアは人工知能(AI)を使った画像認識技術に強みを持つ。すでに約2000万の画像データを学習済み。顔の画面を使ってじゃんけんをしたりでき、国内ではハウステンボス(長崎県佐世保市)が接客で採用している。
留守宅の見守りも
ユカイ工学(東京都新宿区)は2007年設立。同社の「BOCCO(ボッコ)」は家族間のコミュニケーションを支援するロボットだ。ボッコに話しかけたメッセージを音声やテキストでスマートフォンに送ったり、スマホからボッコへ話しかけたりできる。青木俊介CEOは「親子間のやりとり支援を想定した」と説く。
ボッコはセンサー類とも連携している。人やペットがボッコの前を通るとスマホへ通知する「人感センサ」や、玄関や窓の鍵の開け閉めを通知する「鍵センサ」、部屋の温度や湿度を通知する「湿度・温度センサ」などの機能も持つ。仕事などで留守の間でも、家庭内の見守りができるというわけだ。
2010年設立のハタプロ(東京都港区)はフクロウを模した手のひらサイズの案内ロボット「ZUKKU(ズック)」を開発した。三越伊勢丹ホールディングスやパルコ、オートバックスセブンといった小売店と共同で、ズックを使って来店者の年齢や性別といった属性を把握する実証実験を進めている。得たデータを売り場作りなどのマーケティングに生かしていく。
ズックも低価格と高機能を売りにする。伊澤諒太社長は「本格展開時には数万円にしたい」という。ズックで得たデータは米IBMのAI「ワトソン」の応用プログラムインターフェース(API)を活用して分析する。ハタプロは、ズックの大きさや形、性能を一つに定めずユーザーに応じてアレンジする方針。使い勝手でも差別化する。
制御系でもベンチャーが躍進
高い制御技術によって、産業用ロボットが従来入れなかった分野へ活用させているベンチャー企業も出てきた。LinkWiz(リンクウィズ、浜松市中区)は2015年創業。産業用ロボットが自動で物体を認識し、動きを補正するソフトウエアを得意とする。
一般的な産業用ロボットは、同じ動作を繰り返すことに長けている。同じ位置に拾わせたい部品を置けば、何度でもしっかりつかんで拾う。だが、1センチメートルでも部品を置く位置がずれているとつかめない。人間のように、部品の位置がずれていても目でずれを認識してアームの動きを補正するということをしていないからだ。
産業用ロボットでは、人間が動きを教える教示(ティーチング)という作業がある。ティーチングペンダントという独特なコントローラーを使って一つ一つの動きを登録していく。ティーチングはスキルを持った技術者が行うもので、時間と手間がかかり人材確保にも苦労する。
リンクウィズの「Lロボット」はティーチングの自動生成ソフトだ。3次元認識のカメラと産業用ロボットを連携させて、ワーク(加工対象)の隈の位置をしっかり把握しつつ、溶接や塗装、切断、検査などの作業をロボットが自動で行える。吹野豪社長は「ワークにはわずかな誤差がある。このずれをどう補正するかがロボット化への課題だった」と語る。
ロボットで3次元的に自動検査ができるソフト「Lクオリファイ」も、検査治具を一つ一つ作るコスト、手間を削減できるものとして引き合いが多い。
物流のボトルネック解消
人手不足に悩む物流業界で、物流施設の自動化にロボットを活用する動きが進んでいる。自動倉庫や仕分け装置、搬送装置などで物流現場の自動化が進んだ。だが、発送先別に商品を詰め合わせる「ピッキング」など一部の作業はいまだ人海戦術に頼っている。
2011年に創業したMUJIN(東京都墨田区)は、産業用ロボットと3次元カメラを使ってピッキング作業の自動化を実現するコントローラー「ピックワーカー」を展開する。
ピックワーカーではティーチングなしに、ロボットがバラバラに置いてある箱を的確につかむことができる。狭い場所でも干渉物を登録しておけば、勝手に回避する動きを行う。滝野一征CEOは「倉庫のピッキング作業での人不足は喫緊の課題。ロボットは24時間文句言わず働くので生産性向上にもつながる」と笑う。
MUJINのピックワーカーは通信販売のアスクルなど国内企業に採用されたほか、中国のインターネット通販大手JD.com(京東商城)が新設する全自動大型物流センターへの導入も決まった。
MUJINは従業員35人のうち20人強が外国籍。米国、中国、ウクライナなど10カ国ほどから優秀な技術者が集まる。滝野CEOいわく「日本にあるグローバル企業」という点もユニークだ。