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「意識の揺らぎ」は前頭葉が制御している。東大が突き止めた意義

東京大学の渡部喬光准教授は、意識が安定化したり不安定化したりする「意識の揺らぎ」を脳の前頭葉領域が制御していることを突き止めた。併せて刻一刻と変化する脳全体の神経活動パターンによって制御の仕方が決まることも分かった。自閉スペクトラム症や注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症といった精神神経疾患の治療法につながる可能性がある。

意識の揺らぎや柔軟性には前頭葉や前頂葉が関与しているとされる。前頭葉の神経活動を人為的に抑制しても意識の揺らぎに変化がなかったとの報告があり、前頭葉の神経活動は揺らぎの原因か結果かで議論されていた。

渡部准教授は新しい実験手法を用いて少なくとも三つの右前頭葉領域が意識の揺らぎに影響を持つことを示した。この領域の神経活動を抑制すると、視覚意識が安定化したり、不安定化したりすることを実験で確かめた。

脳神経活動のパターンを即時に追跡し、特定のパターンの時にだけ刺激を与えられる「脳活動状態駆動型神経刺激法」を開発。モデルや仮説なしに背後にある状態の遷移挙動を解析できる「エネルギー地形解析」で脳活動パターンをモニターしながら、特定の脳活動状態の時に弱い刺激を与えた。

実験の結果、意識が安定化するかどうかは刺激のタイミングによって決まることが分かった。従来の実験手法では、脳活動パターンをモニターせず強い刺激を与えるため、影響が平均化されて検出が難しかった。

さらに、今回用いた手法を定期的に繰り返すことで、意識の安定化や不安定化を徐々に定着させられることが分かった。

日刊工業新聞2021年12月1日

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