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厚さ10分の1でもEV作動電圧に耐える。窒化ケイ素セラミックス基板を実証

厚さ10分の1でもEV作動電圧に耐える。窒化ケイ素セラミックス基板を実証

窒化ケイ素基板の(a)材料組織(b)外観(c)透光性に優れる(産総研提供)

産業技術総合研究所の中島佑樹研究員と福島学研究グループ長らは、窒化ケイ素セラミックス基板の絶縁耐圧を評価し、厚さ32マイクロメートル(マイクロは100万分の1)まで薄くしても次世代電気自動車(EV)の作動電圧に耐えることを実証した。基板の厚さが従来の10分の1になるため、放熱性は10倍に向上する。パワー半導体を載せる絶縁基板として利用できるほか、パワーモジュールを設計するための知見になる。

窒化ケイ素の市販絶縁放熱基板を同32マイクロメートルまで研磨して絶縁耐圧を測った。同300マイクロメートルでは10キロボルト程度の絶縁耐圧があるが、同32マイクロメートルでは2・8キロボルトまで低下した。厚みが減るにつれて絶縁性は低下する。それでも次世代EVの作動電圧850ボルトよりも十分に高かった。放熱性が10倍に向上するため、発熱するパワー半導体から冷却フィンへ熱を輸送しやすくなる。

また、薄くすることで光が透過するようになり、色や光を検査や点検に利用できる可能性がある。基板は曲げられるため、限られた設計空間の複雑形状に合わせたパワーモジュールを設計しやすくなると期待される。

日刊工業新聞2021年11月26日

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