航空機生産の課題を解決する「国内初」の研究機関の全容

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航空宇宙は将来の市場拡大が期待される産業分野だ。高品質と厳しい規格認証、極端な多品種少量生産が必要なため、部品作りは人手に頼るところが少なくない。自動化を含む高度で効率的な航空宇宙特有の生産技術の確立はいまだ発展途上の分野だ。東海国立大学機構の航空宇宙生産技術開発センター(岐阜市)は特に航空機の生産に関する諸課題の解決に取り組む国内初の研究機関だ。(編集委員・村国哲也)

航空宇宙生産技術開発センターは2019年4月に岐阜大学内でスタートした。2020年4月に岐阜大学が名古屋大学と東海国立大学機構を組織したのに伴い、同機構傘下に改組した。現在は両校から約50人の研究者が参加している。

企業との連携により生産技術を実践的に研究するのが同センターの大きな目的だ。企業側では、航空機関連メーカーとして岐阜県に拠点を置く川崎重工業とナブテスコ、さらに装置や航空機関連の工作機械や工具のメーカーとしてオークマ、アマダ、日本特殊陶業、村田機械も研究に参加している。

航空宇宙生産技術開発センターの主要研究テーマ

研究分野は、①ITを活用した生産管理②加工組み付けロボットによる自動化③自律移動ロボット(AMR)による工場内物流の高度化④難削材・難加工部品向けの先端加工技術の4分野だ。全体で諸データを仮想空間で解析し、生産の高度化に生かすサイバー・フィジカル・ファクトリー(CPF)の実現を図る。

実際に取り組む研究テーマは40以上。例えばITの活用では、穴あけ加工の技能習得や加工状態計測のシステムという局所的な技術から、人とモノの工場内センシング、計画変更などに柔軟に対応する生産計画支援システムといった全体的なシステムまで開発対象は幅広い。

ロボット活用では、小型ロボットによるドリル穴開けや難削材加工、飛行ロボット(ドローン)による航空機体の外観検査、ロボットによる部品の組み付けや検査の自動化に取り組む。

AMRの開発も特徴的だ。航空機は部品が大きく、一般の無人搬送車(AGV)は生産現場で使いにくい。作業車をよけながら自律的に走行するAMRを開発し、試作機をセンター内などで実証中だ。AMRのための軌道計画・制御、障害物を認識する画像処理などの技術も開発する。加工技術では工作機械や工具のメーカーとの共同研究も進む。

ただ、研究成果の本格導入例はまだない。スタートして3年目の現在の試行錯誤を「研究スタイル自体も作り上げている途中」と小牧博一センター長は説明する。そして「実際の航空機生産ではコスト、納期、品質の厳しい要求がある。研究者の意識改革も必要」と説く。今後は人事制度や組織のあり方も変えていく。業界での認知も少しずつ広がっており、「企業からの相談が増えてきた」という。

共同研究で目指すのは既存の生産技術の改良ではない。「海外に負けない革新的な生産技術」(小牧センター長)だ。

日刊工業新聞2021年11月1日

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