超低熱抵抗のSiCパワー半導体がスゴイ。阪大などが独自の銀焼結接合技術で開発
大阪大学産業科学研究所フレキシブル3D(F3D)実装協働研究所の陳伝彤(トウ)特任准教授らとヤマト科学(東京都中央区、森川智社長)は、独自開発した銀焼結接合技術により、超低熱抵抗の炭化ケイ素(SiC)のパワーモジュールを開発した。接合部の温度が従来のハンダ接合の270度Cから180度Cに低下した。自動車やIoT(モノのインターネット)デバイスなど、高耐熱性と高信頼性が必要な分野での応用が期待される。
SiCと絶縁基板、アルミニウムのヒートシンクを低温低圧の銀焼結で直接接合した。従来、ハンダ接合で必要だったアルミニウム表面のニッケルなどの薄膜が不要になった。熱抵抗が約半分になり放熱を阻害せず、製造コストも低減できる。ヒートシンクなど加圧する接合が使えない複雑形状でも大面積接合ができる。高出力密度と小型・軽量化がしやすい。
SiC半導体は250度C以上の高温でも動作でき、エネルギー損失が小さく、自動車や鉄道、産業用ロボットで需要がある。ただ、これまでハンダやグリスを使った接合で熱抵抗が生じるのが課題だった。放熱性向上により二酸化炭素(CO2)排出量の削減に繋がり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する。ポスト第5世代通信(6G)などの通信や、航空宇宙産業でも活用が期待される。
阪大F3D協働研究所は、モノづくり技術と先端技術を融合した次世代エレクトロニクス技術開発拠点。ヤマト科学などと産学連携の共同体も運営する。
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日刊工業新聞2021年9月27日