“開かれた”三菱一号館美術館、「あつ森」でファンの裾野拡大も

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オディロン・ルドン「グラン・ブーケ」(1901年 パステル・キャンバス 三菱一号館美術館提供)

秋バラの咲く美しい中庭を抜けると赤れんがの洋館が現れる。「三菱一号館美術館」は、かつて三菱合資会社の銀行部などのオフィスビルだった三菱一号館を当時の設計図などに基づいて復元した建物だ。老朽化による解体から約40年。2010年春、美術館として息を吹き返した。

1890年(明治23)、三菱に丸の内が払い下げられ、英国の建築家ジョサイア・コンドルの設計によって4年後に三菱一号館が完成した。当初から、丸の内を単なるビジネス街ではなく「成熟した文化・芸術の都市にする」という、街づくりの構想があった。美術館は構想を具現化したものの一つだろう。

コレクションは、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックをはじめ、建物と同時代の19世紀末の西洋美術を中心に収蔵している。象徴主義の画家オディロン・ルドンの「グラン・ブーケ(大きな花束)」は、現在、イスラエル博物館所蔵「印象派・光の系譜」展にあわせて公開中だ。

昨年、コロナ禍で行き場をなくした生花(ロスフラワー)が話題となったが、10周年記念の「ルドン、ロートレック展」では、展覧会チケットと一緒にルドンの名画をイメージした花束を販売し好評だった。また、人気ゲーム「あつまれどうぶつの森」の中で仮想空間に気軽に絵画を飾れるようにするなど、ファンのすそ野を広げている。

多くの美術館は財団法人だ。一方、同館は三菱地所が事業活動の一環として運営していることから、新たな挑戦がしやすい面もある。学芸員によるオンラインレクチャーは有料でもビジネスパーソンなどに人気という。

ブランドスローガンは「新しい私に出会う、三菱一号館美術館」。河野安紀美術館室長は「過去にタイムスリップしたような空間で建物や絵画を楽しむだけでなく、時空を旅しながら、新しいものの見方をみつけてほしい」と話す。


【メモ】
開館時間(通常)=10―18時▽休館日=月曜日(祝日、休日は除く)など▽入館料=展覧会により異なる▽最寄り駅=JR中央線ほか「東京駅」▽住所=東京都千代田区丸の内2の6の2▽電話番号=050・5541・8600

日刊工業新聞2021年11月12日

COMMENT

藤木信穂
編集局調査管理部
記者

三菱一号館は日本初のオフィスビルであり、日本の近代化の象徴でもある。これを機に丸の内にはれんが造りが次々と建ち並び、「一丁倫敦」(いっちょうロンドン)と呼ばれる町並みを形成した。現代に美術館としてよみがえり、開館時に大きな話題になったことは記憶に新しい。かつて銀行の営業窓口として使われたフロアはカフェ・バーになっている。丸の内は三菱グループの中核拠点であり、まちづくりの一環として“開かれた美術館”を運営する。それが広い意味での社会貢献活動になっている。

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三菱一号館美術館

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