デジタルと対面をどう融合するか、苦戦の化粧品メーカーが絞り出す知恵
化粧品メーカーがデジタルと店頭の対面販売を融合した顧客対応を推し進めている。感染対策もあり、まず導入を進めたのは非接触で商品を提案するオンラインカウンセリングで、対面併用でITを駆使したサービスが相次いでいる。コロナ禍で化粧品販売が苦戦する中、多様化する生活様式への対応も課題の一つ。各社は顧客の要望をくみ取る接客に知恵を絞っている。(縄岡正英)
「1対1のプライベートな空間だから集中して、落ち着いて相談できた」―。コーセーがウェブを使って9月に始めた非対面のカウンセリングを受けた顧客からは、こんな声が寄せられるという。
顧客は専用サイトから美容部員を選んで30分の枠を予約。時間になると画像を見ながら美容部員から助言を受ける。動画の滑らかさを高めたほか、解像度も引き上げ、繊細な色や質感を画面から伝わりやすくした。美容部員は来店者だけでなく、オンラインで「全国のお客さまに接することできて、やりがいを感じる」という。
肌に直接触れないオンラインのカウンセリングの希望者は増えている。感染対策もあるが、店頭を訪れる時間のない顧客がオンラインを歓迎する声もある。ただ、それでも実店舗で美容部員の助言を受けながら選びたいという声も少なくない。オンライン、店舗の双方を活用し「さまざまなニーズに対応する必要がある」(小林一俊コーセー社長)。
花王は10月から、美容部員を派遣する百貨店などの店舗に新たな店頭顧客管理システム「FACE」を順次導入している。店舗の美容部員を支援するツールに追加搭載したのはLINEの通信機能。肌測定の分析結果など顧客別のデータをもとにブランド情報などを送信し、店舗だけでなく、店頭外でもカウンセリングや仮想メークなどの体験が可能になる。
「毎日、専門的なアドバイスをしてほしい」「一緒に手入れを続ける仲間がいれば」―。そんな声に応えたのが資生堂。11月17日からチーム伴走型美容プログラムを始める。
テーマ別に募る参加者はまずオンラインセミナーを受講。その後、肌測定結果に基づいた美容部員の助言を連日LINEチャットで受けるほか、参加者同士で情報交換する。7月、非接触で肌内部の状態の測定を行う機器を店頭に導入して以降、「久しぶりの肌測定を喜び、訪れる人は増えた」という。さらに満足度を高めるため、デジタルも使う。
調査会社のインテージによると、1―9月の国内化粧品市場の伸長率は前年同期比1%増だが、コロナ前の水準には遠く及ばない。インバウンド(訪日外国人)の減少、緊急事態宣言の影響などで回復は遅れ、顧客の購買行動は変容している。店頭販売に加え、自由に手に取って購入するセルフ販売やネット販売も増えるなどコロナ前から購買方法は多様化。個別ニーズに応えて成長路線に戻すには、あらゆる経営資源・技術を融合した戦略が問われている。