切削工程の不良品発生率を50分の1に、ミネベアミツミの常識の逆を行く発想
ミネベアミツミは、自社開発した可動式のロボットノズル「ウェイビーノズル」で、切削工程の不良品の発生率を従来の50分の1に抑えることに成功した。「工作機械のノズルは動かないもの」という常識の逆を行く発想とグループの総合力で、金属材料の切削の際に出る切りくず(切粉)の除去率を改善できたのがポイントだ。約3年前から外部販売を本格的に始めた。(山田邦和)
ミネベアミツミのウェイビーノズルは切削などの工作機械に取り付けて使う。ノズルが揺れ動き、工具と材料の接点に当たるように切削液(クーラント)を噴射。切粉を一定方向に誘導する。
内部のステッピングモーターが駆動してノズルの位置などを制御。ノズルの動きは本体の電子基板に記憶させられる。スマートフォンやタブレットに専用アプリを入れれば無線で操作したり、稼働状況を遠隔監視したりすることも可能だ。
金属製品の生産は「切粉との戦い」とも言われる。絡んだ切粉が製品の傷や工具破損の原因になるためだ。切粉は装置内の様々な場所にも溜まる。機械の動作不良や故障を防ぐには、機械を停止して切粉を掃除しなければならず、生産効率の低下を招いていた。
ミネベアミツミでハードディスクの針を動かす軸(ピボット)の加工を担当するメカアッシー事業部も切粉に悩んでいた。ピボット関連部品の生産量は月約1億個で、わずかな不良でも生産に大きな影響が出る。
ウェイビーノズル開発のヒントになったのは、切粉の掃除に使うエアーブローだった。「エアーブローは先端を振って使う。『あらかじめクーラントをスイングさせながら加工すれば、切粉は絡まないのでは』と考えた」と同事業部の安土泰弘部長は話す。試作品を使用すると切粉が絡みにくくなっただけでなく、装置に溜まる切粉も減らせた。
ステッピングモーターや電子基板など部品の約80%は自社製。スマホとの連動には旧ミツミ電機の通信技術を使っている。
2013年にピボット部品の製造工程に試験導入したところ、約1%だった不良品発生率が0・02%に低下。ベアリングなど他製品の加工にも水平展開すると、導入前に比べ工具寿命が最大30%延び、加工後の切粉除去作業の頻度も約98%低減できた。現在は国内外の同社拠点にある2000台以上の切削加工機に搭載している。
本体を半分に小型化し、加工スペースが小さな工作機械にも搭載できるようにした上で外部販売を本格開始した。自動車部品メーカーなどを中心に今期は1億円の売り上げを見込む。「無償レンタルしたお客のうち、約6割に購入していただいている」と販売を担当する小宮康一郎理事は手応えを語る。「ミニチュアボールベアリングで世界首位の当社の現場で日々鍛えられている点がウェイビーノズルの強み。工作機への標準装備を目指し、早期に売上高10億円を狙う」と小宮理事は意気込む。