「女性の場合はどうですか」と聞かれても。見落としがちな“少数派の中の多様性”
女性活躍推進で重要な会議に女性が参加することが増えている。最近、耳にするのは「女性の場合はどうですか」と問われた当事者の戸惑いだ。尋ねられた方は「私が女性すべてを代表しているわけではないのに…」と悩ましいという。聞く側は“少数派の中の多様性”まで思いが回らないようだ。
ある案件で出張が必要になり、その担当者が子育て中の女性だった場合を考えてみよう。上司が「彼女に出張は無理だろう。別の男性に代えようか」と思案したら、「助かります」と当事者に感謝されることもあれば、「もちろん私が行きます」だったり、「工夫しますので日帰りでやらせてください」だったり、反応はさまざまだろう。
となると上司がとるべき態度はあれこれ迷う前にまず直接、聞いてみることだ。その上で「あなたの成長を考えると今こそ、手がけてほしい」とメッセージも出す必要も時にあるだろう。前向きの評価も含めて無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の固定的な見方を改め、対話によって個別相互の理解を深めることが大切だ。
少数派の少数派、理系女性も同様だ。私はこの1、2年の集中取材を経て、書籍『理系女性の人生設計ガイド』(講談社)を共著でまとめたが、もはや理系女性もひとくくりにできないと実感した。
例えばかつては理系なら女性も数学・物理が得意に決まっていた。しかし生命科学やデータサイエンスの花が開く現代はさほどでもなく、むしろ社会とのコミュニケーション能力が成果の決め手であったりする。
多様性を高める最初の段階は、少数派の声を聞くことだった。次は一人ひとりの思いや考えを受け止めていくことだと意識したい。
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日刊工業新聞2021年11月1日
