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理系女性に共通して潜むキャリア構築の落とし穴

連載・理系女性のキャリア-文系女性、理系男性との違い #01

皆様、こんにちは! 日刊工業新聞社の論説委員兼、編集局科学技術部編集委員をしています山本佳世子です。科学技術から大学・産学連携の担当を長くやっていますが実は、若い頃から時々に集中的に取材してきたテーマとして「理系女性」があります。私が理工系の大学院修士課程を終えて入社した当時、理系女性記者は珍しかったことから、「文系・理系」「男性・女性」の特徴や強み・弱みに関心を持ってきました。

そこで、ニュースイッチの読者に向けて、連載「理系女性のキャリア~文系女性、理系男性との違い」を書くことになりました。新聞紙面の記事引用とは違う、私個人の思いがふんだんに入ったエッセイです。当事者はもちろん、理系女性をはじめ人材育成を真剣に考える男性らにも目を通していただいて、お役に立てればよいなと思っています。それでは第1回「スペシャリストで少数派、キャリア構築は意識的に」です。

スペシャリストで少数派、キャリア構築は意識的に

ここ数年の女性活躍・ダイバーシティー推進の社会変化は驚くほどの急展開です。キャリアに関わる情報やノウハウも、メディアで豊富に紹介されています。ただ、「理系×女性」という「スペシャリストで少数派」の場合は注意が必要です。

「理系女性」は当然ながら、「文系女性」(女性の多い職場での多数派)とも「理系男性」(理系職場の多数派)とも違う側面があります。例えば、文系女性なら30歳など比較的、早い年齢で部下を持ち、組織内の人間関係をよく読んでビジネススキルを磨くなど、「事務系ゼネラリスト」の心構えを育む機会が少なくありません。営業職のことも少なくなく、管理職の階段を上がるには女性同士を含めて競争だ、という意識が自然に身に付いているかもしれません。

また、理系男性は「技術系スペシャリスト」の期間が長く、昇進を望まない人もそれなりにいます。その場合は経験値を上げてからITを武器に転職したり、仲間とベンチャーを起業したり、大学教授へ転身したり。出向先企業でも技術のスキルを生かして、楽しそうにしているケースが見られます。理系男性はそういったさまざまな先輩モデルを目にしつつ、将来の姿を考えていきます。

ところがどうでしょう。理系女性は自分を重ね合わせられるモデルを、周囲にほどんど見つけられません。そのため自分はどう変わっていくのか、想像しづらい面があります。年齢を重ねて、組織で「脱皮していく」ことが求められるようになっても、気づくのが遅いため、途方に暮れるようなことが、出てくるかもしれません。実はこれは私自身も経験したことであり、「組織におけるスペシャリストで少数派の人には、共通の落とし穴なのだな」と実感したのです。

もっとも、理系女性のモデルは身近にいないだけで、社会を見渡せば魅力的な人がそれなりにあちこちにいます。私は2020年に手がけた理系女性の企画取材を通じて、そのことを強く感じました。

現在のトップクラス層はまだ、「家庭環境にも恵まれ、男性に近いパワーや感性を持つ一握りのスーパーウーマン」の雰囲気が漂っています。1986年施行の男女雇用機会均等法がなかった世代は、本当にそういう人しか生き残れなかったのです。ところが施行により職場環境は劇的に変わりました。そのため50代半ばの”均等法世代”以降から中堅・若手にかけては、様変わりとなってくると私は見ています。

理系のキャリアに進むには「数学・物理の成績がよいこと」というのが長年、不文律でした。かつてはそういった”バリバリの理系”しかいませんでした。ですが、近年はライフサイエンスが花開くとともに、数学・物理が必ずしも得意でない”柔らかい理系”が増えてきましたよね?

さらに現代はデータサイエンスや環境など、文理融合の人材もより重要になってきています。この流れの中で理系女性は、数も質も大きく発展していくことは間違いないでしょう。

そこで本連載では、これから独自のキャリアを構築していく上で知っておいてほしいこと、参考にしてもらいたい情報などについて、5月に刊行した『理系女性の人生設計ガイド 自分を生かす仕事と生き方』(大隅典子、大島まり、山本佳世子著)(講談社ブルーバックス、1100円)をベースに紹介していきます。具体的には「執行役員や学長らトップクラスのリーダー」「博士学生、若手の研究者や企業人」「学部生・修士課程学生」「中高生リケジョ」と、ライフステージごとに記事をお届けします。

それでは次回は「社会のトップクラスに、理系女性はこんなにいる!」で。またお会いいたしましょう!

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