想定外の物性を11種予測、分光実験をAI解析
東京大学の溝口照康教授と東京工業大学の清原慎日本学術振興会特別研究員らは、分光実験を人工知能(AI)技術で解析し、無関係と考えられてきた物性を含む11種類の物性情報を引き出すことに成功した。既存の分光スペクトルデータから想定外の発見がなされる可能性がある。
電子線やX線を照射する内殻電子励起分光法の吸収スペクトルをAI技術のニューラルネットワークで解析した。有機分子のデータベースから炭素に関わる内殻電子励起スペクトル11万7000個を計算し、内部エネルギーや分子量などを予測した。
その結果、11種の物性の予測に成功。そのうちの光学特性や振動特性は、これまで内殻電子励起スペクトルとの関係性が分かっていなかった。特に分子量はスペクトルと無関係と考えられてきた。
ニューラルネットワークの学習済みモデルを分析すると物性とスペクトルのピーク位置や強度の相関が分かった。一度の分光実験で得られる情報が増える。
日刊工業新聞2021年10月18日