不祥事で注目浴びたデジタル庁、問われる組織の透明性と情報発信の実効性

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牧島デジタル相は国民への情報発信に力を注ぐ(10日のオンラインイベント)

9月に発足したデジタル庁が国民への啓発活動に腐心している。年に一度の「デジタルの日」を今年初めて創設。10月10日にオンラインイベントを行うなどし、デジタルへの関心の喚起に努めた。ただ従来デジタル庁は、不祥事で注目を浴びる事も多かった。組織の透明性確保や情報発信の実効性向上が、あらためて問われる。(編集委員・斎藤弘和)

「(デジタルについて)定期的に振り返り、体験し、見直すきっかけをつくりたかった」。牧島かれんデジタル・行政改革・規制改革担当相は10日、デジタルの日の創設意義をこう説明した。その上で「デジタルとともに、温かい心を誰かに贈って頂ければうれしい。例えばパソコンの設定が苦手な人を手伝うなど、デジタルデバイド(情報格差)対策に関わることもその一つだろう」と語った。

デジタル庁は同日開いたオンラインイベントで、デジタル化に貢献した個人や団体をたたえる「デジタル社会推進賞」の受賞者を発表。日本のデジタル化の状況に関する調査結果や、地方自治体・中小企業における先進事例も紹介した。eスポーツのデモなども実施し、幅広い生活者の関心を喚起しようとする姿勢が見てとれた。

ただ、こうした啓発活動が精力的に行われるのは、デジタル庁の使命や、その達成に向けた努力が十分に認知されていないことの裏返しとも言える。

デジタル庁の前身である内閣官房IT総合戦略室は、東京五輪関係者などの訪日客向けシステムの調達過程で不適切な対応があったと指摘された。9月にデジタル庁が発足した後も、赤石浩一デジタル審議官が内閣官房時代にNTTから過剰な接待を受けていたとして減給処分となった。

このような騒動に耳目が集まったことで、政策の周知に影響が出た側面は否めない。平井卓也前デジタル相は退任時の会見で、「デジタル改革の本質が十分に伝わっていなかった」と唇をかんだ。

デジタル庁は同庁の公正性確保を推進する有識者会議「コンプライアンス委員会」を発足するなど、手をこまねいてはいない。「今後もデジタル化のプロセスを透明化するために、情報を全部オープンにし、国民が分かるように説明していくことが大事だ」(平井前デジタル相)。

後を継いだ牧島デジタル相は、「現場の声を聞くことを大切に、しっかり改革を進めていきたい」とも述べている。国民の必要とする情報を的確に発信していけるか、指導力が試される。

日刊工業新聞2021年10月12日

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