力学特性を自在に制御できる金属構造体がスゴイ。神戸大が作製に成功
神戸大学の池尾直子助教、弓削商船高等専門学校の福田英次准教授、大阪大学の松垣あいら助教、石本卓也准教授らの研究チームは力学特性を自在に制御できる金属構造体の作製に成功した。金属3Dプリンターで3次元的に“パズル構造”を組み上げた。生体骨に似た力学特性の発揮が可能で、計算機シミュレーションと組み合わせることで医療機器などに応用する。5年後の実用化を目指す。
研究チームは耐摩耗・耐熱性、高強度を持つコバルトクロム合金粉末を用い、粉末床溶融結合法の一種であるレーザー積層造形法により金属構造体を作製した。構造体は1辺3ミリメートルの立方体27個の内部構造とその周囲を覆う厚さ0・5ミリメートルの外壁構造。粉末が原料なので、形状や寸法などを任意に変えられる。
未溶融粉末部と溶融凝固部(金属緻密体)の配置例は1億通り以上で、3次元パズルのように自在に組み合わせられる。構造体の弾性率は事前に計算・設計可能で、粉末部と溶融凝固部の配置パターンの制御で狙った力学特性を出せる。
特定方向に強い力学特性「異方性」や、あらゆる方位への均質な力学特性「等方性」の機能を自在にコントロールでき、骨の力学特性を保持した生体内医療デバイス素材の開発につながる。金属3Dプリンターは造形後に原料粉末を取り除くのが一般的。
原料粉末を構造体の内部に閉じ込めることで、生体骨に類似した機能をコントロールできる構造体の作製を実現した。
研究は内閣府主導の戦略的イノベーション創造プログラムにおける「マテリアル革命」の支援で実施した。
日刊工業新聞2021年8月23日