ニュースイッチ

「グリーンボンド」の発行が10倍増に!急拡大の背景は?

環境事業に資金を使う債券「グリーンボンド」の発行が活発化してきた。投資環境が整い始めたことが背景にあり、2018年度は、15年度比で関連市場がおよそ10倍増と予測する調査もある。これまで海外で目立っていたESG(環境・社会・ガバナンス)投資が、国内でも広がりをみせるか注目される。(浅海宏規)

みずほ証券によれば、特定の社会的課題への対処や解決を使途に掲げる債券「ソーシャルボンド」などと合わせた「サステナブル債」の国内発行額は、年々増加しており、18年度には約1兆円になるという。

急拡大の背景には、投資環境が整備されてきたことがある。国際資本市場協会(ICMA)が14年に自主的なルール「グリーンボンド原則」を策定。調達資金の使途や選定プロセス、資金管理、情報公開の4項目を明確化し、その後もルールの確立に努めている。

国内では、東京証券取引所が18年1月、プロ投資家向け債券市場「東京プロボンドマーケット」に、グリーンボンドやソーシャルボンドに関する情報を閲覧できるプラットフォームを設けた。両ボンドへの関心が高まる中、投資家への情報提供を強化する。

17年3月には環境省がグリーンボンドガイドラインを策定。同年11月に鉄道建設・運輸施設整備支援機構が環境省のモデル発行事例として初のグリーンボンドを発行している。一般企業初の事例としては戸田建設が同年12月、洋上風力発電施設の設備調達資金に充てるために発行した。

投資法人が、不動産などの取得、修理費、借入金の返済などに充てる「投資法人債」でも注目されている。みずほ証券の小出昌弘デットキャピタルマーケット第二部長は、「投資法人債の課題の一つは、一般企業の社債と違って投資家層が薄いこと。その点においてグリーンボンドに対する期待は高まっている」と指摘する。

18年5月には、日本リテールファンド投資法人が不動産投資信託(J―REIT)としては、初めてグリーンボンドを発行した。日本プロロジスリート投資法人や、ジャパンエクセレント投資法人なども発行を検討しているとされる。

グリーンボンド発行はESGの観点から、先進的な問題に経営として取り組んでいることをアピールできることもあり、市場は手堅く拡大しそうだ。

日刊工業新聞2021年7月26日

編集部のおすすめ