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ライフサイエンスに2000億円。政投銀「新ファンド」の狙い

ライフサイエンスに2000億円。政投銀「新ファンド」の狙い

政投銀はベンチャーエコシステムの形成に向けた取り組みを進める

政府はポストコロナを見据え、ライフサイエンスなどのイノベーション分野への投資を加速している。日本政策投資銀行(DBJ)は3月に「DBJイノベーション・ライフサイエンスファンド」を組成し、横浜市立大学発ベンチャーのCROSS SYNC(横浜市金沢区)に第1号案件として出資した。コロナ禍からの回復や成長を目指し、ベンチャーエコシステムの形成に向けた取り組みを進めている。(編集委員・川瀬治)

DBJイノベーション・ライフサイエンスファンドの運用規模は約2000億円。日本医療研究開発機構(AMED)などと連携し、医療分野などのイノベーションに向けた投資を今後も加速する。第1号案件となったCROSS SYNCはAMEDの紹介で、同ファンドのほかコニカミノルタや豊田通商、ファインデックスなどが出資している。

CROSS SYNCは人工知能(AI)を活用した画像解析で患者の常時モニタリングなどを行う重症患者管理システム「iBSEN(イプセン)」の開発・運用を行っている。ICU(集中治療室)に関わる医療従事者の専門知識とAIなどの情報技術を合わせることで、重症化リスクなどの情報への常時自動変換や、治療優先度を早期に判断・共有できる仕組みだ。

感染症の拡大に対応した医療提供体制の再構築や、高齢化に伴う医療従事者不足などといった社会的課題の解決が見込める。

同ファンドはインターネットサービス分野への出資も進める。Sansanと共同でFringe81が発行する優先株式を5月に取得している。Fringe81が展開する「Unipos(ユニポス)」は、従業員同士が日常の感謝や称賛を言葉とともにポイント(ピアボーナス)を送り合うことによって、働く仲間同士の相互理解を深め、組織のエンゲージメント向上ができるサービス。こうした分野への成長が期待できることなどから、出資を決めた。

DBJ経営企画部は「コロナ禍からの成長を目指し、持続可能性な社会構築に挑戦するお客さまの取り組みを支援していきたい」としている。新型コロナの収束の兆しはいまだ見えないが、コロナ後の成長分野への投資を加速させていく。

日刊工業新聞2021年8月19日

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