アップル・サムスンと真っ向勝負せず。スマートウォッチ市場 に挑む国内時計メーカーの戦略とは?

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カシオ計算機「G-SHOCK」初のスマートウオッチ「G-SQUAD PRO」GSW-H1000

国内時計メーカーが、腕時計本来の魅力や強みを生かした独自のスマートウオッチ関連サービスを強化している。スマートウオッチ市場は米アップルの「アップルウオッチ」がシェア約4割を握り、韓国サムスン電子が続く。勢いのある海外製のスマートウオッチと真っ向から勝負するのではなく、時計本来のデザインを生かすなど、腕時計ファンへの新たな価値の提供や、協業企業と連携した新サービスの拡充で差別化する。(安川結野)

協業で新サービス創出 IoT機能、家電を遠隔操作

シチズン時計のスマートウオッチはアナログ時計の見た目だが、IoT(モノのインターネット)基盤「Riiiver(リィイバー)」を活用して機能をカスタマイズ(個別対応)できる。例えば、ネイチャー(東京都渋谷区)が手がけるスマートリモコン「Nature Remo」は、リィイバーを介してシチズン時計製のスマートウオッチで家電を操作できる。

動作を設定しておけば、帰宅途中に時計のボタンを押すだけで家の外でもNature Remoからエアコンを起動させることが可能だ。

シチズン時計営業統括本部の大石正樹部長は「シチズンがこだわるのは時計としての魅力。スマートウオッチとしては、リィイバーに連携するパートナーを増やしてIoT基盤の価値を高め、できることを拡大する」と説明する。

ソニーのスマートウオッチデバイス「wena3」もリィイバーと連携する。wena3は、各種電子マネーの使用や活動ログ(履歴)機能などを搭載したスマートデバイス。時計のバックルに装着して使用する。シチズン時計はwena3と一体型のモデルに加え、「アテッサ」ブランドの110モデルがwena3の装着に対応している。

カシオ、ヘルスケア軸足 アプリがランニング支援

カシオ計算機はヘルスケアに特化したサービスで差別化する。サービスの中心は、アシックスと共同開発したランナー向けのパーソナルコーチングアプリケーション(応用ソフト)「Runmetrix」(ランメトリックス)だ。専用の小型センサー「モーションセンサー」を使って体の動きを検出し、目的に合わせたアドバイスでランニングをサポートする。カシオ計算機製のスマートウオッチのほか、アップルウオッチとも連携し、走りながらデータを確認できる。

ランメトリックスの強みは、カシオ計算機が培ってきた高精度なセンシング技術だ。そこにアシックスの知見が融合し、運動への活用を追求した。カシオ計算機スポーツ健康インキュベーションセンターの井口敏之センター長は「ターゲットを明確に想定し、使いやすいインターフェースを開発してきた」と話す。

ヘルスケアに特化した機能で精度を高め、ヘルスケアに関心が高い層を取り込む戦略だ。10月にはウオーキングに特化した「ウオークメトリックス」の提供を始める予定。

カシオ計算機は耐衝撃腕時計ブランド「G―SHOCK」のスマートウオッチ「G―SQUAD PRO」を5月に発売した。

井口センター長は「G―SHOCKのラインアップとしてスマートウオッチをそろえた。G―SHOCKが築いてきた価値や魅力を生かし時計ファンに訴求する」と強調する。G―SHOCKを愛用するファンに向けた新たな選択肢を提示する狙いだ。

時計の魅力最大、顧客開拓

国内時計メーカーは、スマートウオッチ市場でのシェア獲得に比重を置かず、時計が持つ機能や魅力を高める戦略として、スマートウオッチビジネスを展開する傾向にある。

シチズン時計の大石部長は「スマートウオッチは『腕に時計を身につける』という習慣を定着させ、新たな市場を作り出している。腕時計の企業にとってはチャンスでもある」と分析する。

スマートウオッチを入り口に、シーンに合った腕時計の利用を提案するなど、新たな顧客の発掘につなげる狙いもある。スマートウオッチが作り出した新たな市場をどう活用していくか、国内各社の戦略を注視する必要がありそうだ。

日刊工業新聞2021年8月16日

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