5Gで実現する「スマートシティー」。プライバシー問題にどう対応するか
マスキング技術、効果発揮
第5世代通信(5G)は、スマートシティー(次世代環境都市)の実現に向け都市のビデオ監視とデータ分析の高品質・高精度化に貢献する。だが、個人の権利を侵害する前に、どの程度までスマート化するべきかが課題となる。
すべての人々のセキュリティーとプライバシーを同時に満足させることは難しいが、エッジ(端末)側でのビデオアナリティクス(動画分析)のようなソリューションを用いると、そのギャップを埋めることができる。
ビデオアナリティクスの主な機能に、リアルタイムで人物を動的に「マスク」して匿名化するマスキング機能がある。例えば、小売店では5G対応のビデオアナリティクスにマスキング技術を適用することで、動いているヒトやモノを背景上の透過画像に効果的に変換できる。店主はヒトやモノの移動や活動を追跡できるが、個人を視覚的に識別できない。
さらに、コンピュータービジョンや機械学習のアルゴリズムを使用するシーンアナリティクス(動画解析AIによる異常検知)などの新しい関連技術は、マスキングされたフィード上の行動、環境の異常を検知する。異常なイベントのみを効果的に保存し、残りのフィードはリアルタイムで破棄される。
ただし、エッジベースでの監視を確実に機能させるには、5Gインフラで稼働する分散クラウドのアーキテクチャー(設計概念)に組み込む必要がある。
エッジに設置したスマートCCTV(閉回路テレビ)とビデオ分析は、プライバシーを損なうことなくデータ駆動型のプランニングに必要なリアルタイムデータを取得する有力な組み合わせだ。これは5Gでなければ実現できない。エッジベースの監視システムは日本でのスマートシティーの開発で大きな利便性をもたらす可能性がある。
NTTドコモが独自に行った実証実験では、エッジコンピューティングを活用したIoT(モノのインターネット)ソリューションを用いて、監視映像から得た映像データの解釈や分析を可能にした。一般的なセキュリティー、製造工程での品質検査、人の存在の検知、小売店でのマーケティング活動など、さまざまな用途を想定した。
「インダストリー4・0」(第4次産業革命)は目前に迫っており、次の産業段階における経済成長で、都市化に伴う経済的、社会的な課題はさらに大きくなる。日本は、技術の進歩と人間中心の開発とのバランスをとりながら長期的な繁栄を目指す「ソサエティー5・0」の実現を目指しており、先端技術やデジタルインフラへの投資の増加が予想される。
5GネットワークとスマートワイヤレスCCTVカメラネットワーク、分析機能の融合は、リアルタイムで高解像度のビデオフィードを提供し、状況に応じた対応を迅速かつ効果的に行える。日本の継続的な都市改革で重要な役割を果たすことになるだろう。
ノキアソリューションズ&ネットワークス最高技術責任者 柳橋達也