熟練技能者並みに鋼材品質を判定する、日立のAI技術がスゴイ
日立製作所と日立金属は人工知能(AI)技術を用いて熟練技能者並みの鋼材品質判定技術を開発した。品質検査技能者の評価のバラつきを加味して評価法を学習した。光学顕微鏡をのぞいて金属組織を見て判定してきた作業を機械化できる。今後、幅広い鋼種に応用できるように開発を進める。
従来の鋼材の品質評価では金属組織中の炭化物などの形や量、分布を顕微鏡で見て判断していた。この顕微鏡画像と品質の判定結果をAIに学習させた。
品質判定は9段階。AIの学習の際に、例えば検査者が3番目の品質を付ける場合は、本当の品質が2番目のものが何割、4番目のものが何割含まれると、検査者の判断の揺れが生じるかを加味した。この判断の揺れ方が品質の段階によって変わるため検査現場の知見を利用する。そうすると検査員による判定とAIでの判定の一致率が向上した。
これにより、正解率は90%と熟練者並みとなった。AIが低い品質の鋼材を高く評価することはほぼなく、過大判定のリスクは低い。このため、顧客に低品質の鋼材を渡してしまうことを防げる。今後、過小判定も減らしてより精度を高める。
AIの普及に向け、完璧でなく限られたデータから精度の高いAIモデルを作ることが課題となっている。ただ、鋼材の金属組織などのプログラム化が難しく、人の目で判断している評価は完璧な正解データを集めることが難しい。人間の作業は必ずどこかに間違いを含む。この間違い方を現場知識から拾い上げ、AIの学習に加味して判定精度を上げる手法は幅広く応用できる。
日刊工業新聞2021年8月5日